俺様同期の溺愛が誰にも止められない

リビングに入ると、置かれていた革張りのソファーに腰掛けた。
影井からは先に食べていてくれと言われたけれど、さすがにそれはできなくて座ったままあたりを見回す。
リビングの続きにあるアイランド型キッチンにはいつものお皿が並び、IHの上にはお鍋も載っている。
どうやら食事の準備は万端のようだ。
考えてみれば、私はこの3日間アパートに帰っていない。
本来なら自分のベッドでゆっくり眠りたいと思うはずなのに、不思議と影井のマンションに向かう足取りは軽かった。
人の家に来ることがこれほど緊張しないのは、きっとこの部屋の居心地がいいからだと思う。
その理由が昔父さんが使っていたのと同じムスクの香りからなのか、広くて優雅な空間からなのかはわからないが、ここへ来るとなぜかホッとする。

「夕食は、影井が帰ってくるまで待つ方がいいわね」

別にお腹が空いているわけではないし、どうせあと2時間もすれば帰るだろうから、待つこともそれほど苦にはならない。
夕焼けから夕闇に代わっていく街並みを見下ろしながら、私は影井を待つことにした。