俺様同期の溺愛が誰にも止められない

出血多量で瀕死の人が、こんなにも温かな手をしているものだろうか?
こんなにも穏やかな声で話すだろうか?

「碧、落ち着いて」
「だって、素晴が・・・」

さすがにこれだけの出血をすれば無事ではいられない。

「大丈夫、俺のケガは頭部の打撲と軽い切創だけだ」
「でも、白衣が血で染まっているじゃない」
「これは救命活動中に汚染されたもので、俺の血ではない」
「え?」

じゃあ、素晴のケガは・・・

「影井先生、そろそろ移動してもらっていいですか?」

呆然としている私の横から、スタッフの声がかかった。
素晴が移動しないことには救急車の移動ができないようだ。

「ああ、うん」
ストレッチャーの上で横になっていた素晴がゆっくりと起き上る。

どうやら、本当に素晴は軽症らしい。
ああよかったと辺りを見回して、好奇の視線が私に向いていることにはじめて気が付いた。

「碧先生も一緒にどうぞ」

処置室から顔だけ出した高杉先生がニコニコしながら私に手招きしている。
この時になって自分が醜態をさらしたのだと知り、私は耳まで真っ赤になった。