俺様同期の溺愛が誰にも止められない

次々と入ってくる救急車。
その扉が開いて患者が下りる度に、私は車内に視線を向ける。
しかし、素晴を見つけることがなかなかできなかった。

「次の救急車は赤らしいわ」
「そう」

たまたま隣に立ったスタッフの会話。
赤とは緊急性のある重症患者のことで、災害などの現場で患者を振り分けるいわゆるトリアージで最重症とされる状態だ。

キィーッ。
病院へ入った時点でサイレンを止めた救急車がタイヤを鳴らして搬入口へ停車する。
そして後部のドアが開いた瞬間、私は駆け出していた。

「素晴っ」
大きな声で叫びながら走り寄り、抱きついた。

「碧?」
当惑の表情で素晴が私を見ている。

ストレッチャー上で横になっているものの、ちゃんと息をしていて意識もある。
それでも白衣は血だらけで頭部から流れ出た血の跡が額から頬にかけて残っているから、かなり出血もしているだろう。
どちらにしても、重症に間違いはない。

「お願い素晴、死なないで。これからは何でも言うことを聞くから、どこにもいかないで。私を一人にしないでよー」
自分でも止めることのない嗚咽が込み上げてきて、私は素晴に泣きついていた。