「はい次」
「患者は70歳男性、狭心症の既往があり・・・」

司会の先生の声で担当医が患者の説明をし、循環器科や心臓血管外科や救命科の医者たちが科を超えて今後の治療などを話し合うのが合同カンファレンス。
私もいつものように、受け持ち患者の説明を始めた。

「ゆくゆくは手術も視野に入れないといけませんが、現時点では投薬で経過を見ることが望ましいと考えます」

自分が内科医だからってことではなけれど、リスクの大きい手術はできるだけ回避したい。
そんな思いで内服治療の継続を提案した。
しかし、

「検査の結果もいいとは言えないし、早めに外科的治療に切り替えるべではありませんか?」
「年齢的に言っても判断は早い方がいいと思います」

その科にはその科の、それぞれの医師には医師なりの考えがあり、毎回議論は白熱する。
そして、あまり討論が得意ではない私はいつも言い負かされるような形になってしまう。

「はい、次の患者」

ホッ、やっと終わった。
緊張のため額に滲んだ汗をハンカチで抑え、私は息をつく。
少し離れた席では円先生が流暢に討論を繰り広げている。
やっぱり円先生はすごいな、私とは全く違う。