ソフィアは、
スカーレットとフィンレーに見つめられた。

「ただの金持ちです。」

納得できない答えだった。

「いや、ただの金持ちって意味わからないって!」

「ま、とりあえず、
 お金を持っている女の子ですって
 ことでいいの?」

「そ、そういうことにしといてください。」

「ふーん。」

 フィンレーは納得させようとした。
 スカーレットは全然納得できてなかった。

「フィンレー、それでいいの?」

「いいんじゃね?
 だって、
 ホテル代おごってくれるんでしょう。
 ラッキーじゃん。
 俺ら。」

「条件があります。」

「で、出た。
 条件つきじゃん。」

 スカーレットは腕を組んで聞く。
 フィンレーはあぐらをかいて
 ベッドの上に行く。

「はいはい。
 条件とはなんでしょう。」

「私を守ってもらえませんか。」

「守る?
 何から?モンスター?」

「はい。」

 スカーレットとフィンレーは
 顔を見合わせる。

「そんなのお安い御用よ。
 わたしたち、なんだと思ってるの。」

「確かに。
 今は、昇格試験中だけど、
 守るのも人助けだから
 それは構わないさ。
 でも、一緒についてくるって
 ことでいいんだよな?」

「ここじゃないどこかに
 連れ出してもらえるなら、
 どこにでも大丈夫です。
 守ってもらえるんですもんね。」

「もちろん。交渉成立だな。
 約束の握手、しようぜ!!」

 フィンレーは、ソフィアと握手をした。
 とても小さくて細く白い手だった。
 ソフィアは、家族以外の男性と握手したのは
 これが初めてだった。ぞわぞわと腕に鳥肌が立った。
 頬を少し赤らめている。

 スカーレットも同じく、
 ソフィアと握手をした。
 女性同士の握手は友達の印に思えた。
 あたたかく柔らかかった。

「そしたら、
 この握手から俺たちは仲間だな。」

「そうね。
 あなた、魔法使えるんだから、
 私たちがけがしたら、回復魔法してね。
 攻撃魔法もできるし、守らなくても
 強そうだけども。」

「いえ、魔法は
 初期レベルのものしか
 使えません。
 まだまだ勉強不足なので…。」

「そうなのか。
 そしたら、ここの街に
 魔法の書があったんじゃないか?
 明日、行ってみようぜ。
 まずは、腹ごしらえだろ。
 ソフィア、ルームサービス届いてるぞ…と。
 ちょ、待って。
 頼みすぎじゃね?」

 いつの間にかホテルマン数人が次々と料理を
 運び出していた。
 カレーライス、スパゲッティ、ピザ、ステーキ
 ハンバーグ、魚の塩焼き、麻婆豆腐、八宝菜と
 和洋折衷のいろんなメニューがテーブルに並べられた。

「ほら、食べましょう。
 冷めないうちに。
 いただきます。」

 ソフィアは、
 ナイフとフォークを両手に次々と食べ始めた。

 あっけにとられた二人は、驚きながらも
 席について、一緒に食べ始めた。

 バイキングのようにいろんなものを食べている。

 ソフィアは想像以上にたくさん食べるお腹のようだ。
 たくさん食べる割に、スタイルは全然変わらない。

 どこに食べ物がいってるかなぞだった。


 お腹いっぱい食べて、休憩してから
 それぞれに大きなジャグジーつきの
 お風呂に入り、 
 3人とも1人でキングベッドに
 ドカンと横になった。
 ふかふかで気持ちよさそうだった。

 「電気消しまーす。」

 スカーレットが、リモコンで部屋の電気を消した。

 ホテルの外ではフクロウが鳴いている。

 大きな針葉樹の影で黒いローブを着た
 男がフィンレーたちが泊まる部屋をのぞいていた。
 
 トランシーバーで誰かと通信している。

 「今から作戦開始だ。」

 そういうと、真夜中のホテルにカギをかけていた
はずのフィンレーたちが泊まる部屋がガチャと開いた。
 どたどたと同じ黒い服を着た男たちが押し寄せた。

 殺気立ったフィンレーは、
 その音にはね起きたが、すでに遅かった。

 隣のキングベッドに寝ていたソフィアの姿がない。

 荷物も奪われている。

 寝巻のまま、武器を持って、部屋の外に出ると
 さっきの集団が、階段をおりていくのが
 わかる。

「スカーレット!!起きろ。」

「へ?」

 熟睡して寝ていたスカーレットが、フィンレーの声に
 起きた。

「ソフィアが誘拐された。」

「え?!」

 その言葉に一気に目が覚めた。

「早く、着替えろ。
 追いかけるぞ。
 今なら、まだ間に合う。」

 フィンレーは話しながら、鎧などの防具を身に着けた。
 スカーレットは、フィンレーに見えないところまで逃げて、
 急いで着替えた。

 ソフィアをぐるぐるロープでしばって連れていった
男たちは、ホテルを出て、街の噴水広場の方に向かって行った。