フィンレーはジュリアンの体を
起こしては、
持っていた剣を鞘におさめた。

「もう平和に過ごそう。
 って、言っても、建物がこんな粉々に
 崩れていては平和でもなんでもないよなぁ。」

 がたがたと次から次へ積み木のように
 崩れ去っていく。
 こんなにもあっけなく、お城が崩れるのかと
 みな呆然と立ち尽くした。

 ジュリアンは、ぼんやりとすることもなく、
 フィンレーの剣を鞘から抜き取って、
 自分の腹に向けた。

「もう、俺は、負けたんだ。
 このまま長く生きながらえることは
 できない。
 メンフィリアに寝返るなど、
 マラツメリアスの恥。
 ここで朽ち果てるのみ!!」

 ジュリアンは、切腹した。
 マラツメリアスのために生きて来た彼にとって
 メンフィリアのために生きるなど、屈辱でしかない。

 フィンレーは手を伸ばしては止めようとしたが、
 既に遅かった。

 大量の血が砂漠に流れていく。
 フラフラになり、フィンレーが
 後ろから抱き留めた。
 
「ううううぅうぅ…。苦しい。」

「どうして、どうして!!」

 フィンレーの目からとめどもない涙があふれる。
 周りにいたエクレぺは、同じように涙した。
 ケラットは目を何度もこすった。

 スカーレットは直視したくなくて、
 後ろに体を向けた。

 うずくまっていたソフィアは、
 現状を信じられずに、
 ジュリアンのそばに駆け寄った。
 血にあふれた左手をにぎった。

「俺は、あの時、
 君と婚約を取り交わすべき
 だったのだろうか。
 こんなことには 
 ならなかったのかもしれない。
 悔いても悔やみきれない。
 悪かった…。」

「もう、話してはダメ。
 もう…苦しいでしょう。
 どうして、自らの命を…。
 私はあなたを好きにはなれなかった。
 でも生きては欲しかった。
 同じ仲間になれたのなら
 どんなによかったか。
 ありがとう。
 それでもあなたは偉大な人だったわ。」

  
「……それを聞けて安心したよ…。」

 ジュリアンは、横になったまま、
 目から涙を流し、
 そのまま息を引き取った。

 そばにいたフィンレーは、
 腕で目をおさえては涙を流した。
 仲間にするつもりだったジュリアンの死に
 感情がとまらなかった。

 レクエペとケラットも放心状態だった。

 悲しみに暮れた夜空には、細い三日月が
 照らし出していた。

 


◇◇◇

 夜が明けた。
 砂漠の中にジュリアンを埋葬しては、
 祈りをささげた。

 
 みんなは城の残骸の中を突き進む。
 どうやって再建しようかと
 うろうろと見て回ると、
 王座の間であろう、赤いじゅうたんの上に
 壊れた柱のかけらが見えた。

 きらりと輝く、翡翠の宝石かけらが
 散らばって床に落ちていた。

「これ、まだ使えるのか?」

 フィンレーが1粒広い上げる。

「それは、
 1つの塊になっていないと
 効果はないわ。
 さっき壊してしまったし、
 これを直すなんて…。」

 ソフィアは途方に暮れるほどの粉々に
 無理だと嘆いていた。

「そんなの、やってみないとわからないだろう。
 みんな、翡翠のかけら拾うの手伝ってくれないか。」

 フィンレーはてんでバラバラにいるみんなに
 声をかけた。

 ソフィアは意外なことをいうフィンレーを感心した。

 倒れていた壊れていない花瓶を見つけては、
 フィンレーはその中に1つ1つ入れていく。
 レクエペとケラット、スカーレットも
 ちょっとずつかき集めた。

 ソフィアも半信半疑で拾っていく。
 
 ひたすら何時間もかけて拾い続けて、
 最後の1粒をフィンレーが透明な花瓶の中に
 入れていく。

 花瓶の中から緑の光が四方八方に輝きだした。

「なにこれ、どうなってるの?!」

「意味はあっただろう?」

 フィンレーは腕を組んでドヤ顔を見せつけた。