翡翠を求めて騎士を目指したはず。
スカーレットとともに日々の鍛錬で、
疲れ果てたときもあった。

毎日、鉛のように重い体を鞭打って、
自分の体重より重い岩を引きずって、
筋肉を強化させた。

剣の扱い方も先輩兵士に相手してもらっては
左右の振りかぶりを覚えた。

それが、まさかその稽古をした
このお城の兵士に向けて
攻撃をしなければならないなんて
いつ思っていたか。

悔しくて、涙が出る。

真夜中の外壁に体をぴったりとつけた。

テオドールとともに倒した兵士の鎧を
しっかりと身に着けて、紛れ込み
あたかも前から兵士として勤務していますと
いうような態度でお城の中に入り込んだ。

城の周りにある川は、
夜であったためか
ものすごく冷たかった。

鉄でできた鎧が重くて動かしづらい。
門まで続く通路を、歩いていると
さっき倒した兵士であろう
武器が落ちていた。

使い慣れたグレートソードだった。

槍から剣に装備しなおした。

今は、オピンニクスがいない。
宝石はどこまで持っていかれたのか。
生身の体で立ち向かうしかない。

見張り役の兵士に遭遇する。

啓礼して、ごまかした。

「お疲れ様です。
 交代の時間ですか?」

「はい。私が代わります。
 どうぞ、休憩してください。」

 全然、疑うことを知らない兵士に
 素知らぬ顔で対応した。

「ありがたい。
 これが、現在の調査報告です。
 今のところ、不審な者は誰も
 ここを通っていません。
 よろしくお願いします。」

 フィンレーは門番を任された。
 正式に騎士になれたら、喜んで受ける仕事。
 今は、それどころではない。

「承知いたしました!」

 敬礼して見送った。
 とりあえず、怪しまれないように
 門番をするふりをしては、
 後ろから、
 今交代したばかりの兵士を
 気絶させた。
 
「すいません。」

 申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、
 身分がばれてはいけない。
 門の影のところまで、体をずずっと
 動かして、あたかも座って
 門番しているかのような恰好にさせた。

「これでよし。
 ここは何とか大丈夫か。
 城の中のマップは手に入った。
 あとは、みんながどこにいるか
 探さないといけないな。」

 フィンレーは、兜を深くかぶっては、
 手に入れたマップを手に、
 城の奥の方に進んだ。

 扉を開けると
 たくさんの鎧が飾られている。
 赤いじゅうたんがひかれた廊下を進む。

 高価な絵画もたくさん飾られている。

 初めて、通る廊下は、
 何だか落ち着かなかった。
 泥棒になった気分でここにいる。
 心臓の鼓動が早まるのがわかる。

 兵士と同じ格好のスケルトンが3体
 現れた。
 真夜中ということでアンデッドが
 出現しやすくなっていた。

 鞘から剣を引き抜いては、
 攻撃を何度も仕掛けた。

 相手の攻撃で多少の擦り傷は負ったが、
 今までレベル上げをしていたためか
 簡単に倒すことができた。

 廊下を進んだ先には、
 キッチンがあった。
 電気が消えて真っ暗であったが、
 ぼんやりと浮かぶゴースト2体が現れた。
 
「アンデッドばかりじゃ…。
 魔法が使えたよかったんだけどな。」

剣を身構えた。
さっきのスケルトンはガイコツのため
骨に直接攻撃することができたが、
今度はゴーストのため、
何度攻撃しても
空中分解して、
ダメージを与えることができない。


「ちくしょー。どうすれば!」

すると、
横から真っ黒なマントを
かぶった男が静かに現れた。

『ファイアロー!』

魔法使いのようだった。
突然だったが、助かった。
フィンレーは安堵した。

黒いマントの男の魔法は見事に
ゴーストに命中し、2体とも同時に
倒すことができた。
叫び声をあげて、消えていく。

「ありがとうございます!」

「…礼を言ってる暇はない。」

フィンレーの後ろから、
またゴーストが現れては、
男は手をかざして魔法を使う。

また助けられた。

「す、すいません。」

「気をつけろ。こっちだ。」

 男は、指をさして、奥へといざなう。
 マントで隠れるせいで顔の表情は見えない。
 服装も何を着ているかさえもわからない。
 どうして助けてくれるのか。
 わからない。
 
 言われるがままに走って
 黒マントの男に着いて行った。