砂の階段をおりると、
中は氷に囲まれた洞窟になっていた。

異次元空間のようだ。

ピキンパリンと氷の音が響く。
魔法で結界が張られているようだ。

自然のものではない。
誰かが作ったものなのだろうか。

スカーレットは一体どこに行ったのだろうか。

真上からあちこちから砂が落ちてくる。

砂のシャワーのようだった。


「どこにいるんだ?」

「もっと奥の方に行ってみましょう。」

「ちょっと待って、一応、マップも確認するわ。
 ボスもいるかもしれないし。」

リストのボタンを押して、
透明ウィンドウを開く。

まさに現在地は標的の赤いマークが
しるされていた。

「これは、警戒しないとまずいな。」

「え、スカーレットは大丈夫なのかな。」

「落ちたであろう場所は確認したけど、
 どこにもいないよな。
 まさかに誰かに捕まって
 連れ去られた可能性が
 あるかもしれない。
 なんとなく、 
 モンスターの気配がする。」

「それは困ります。
 スカーレットさんがいないと
 戦闘力が…。」

 レクエペがボソッという。

「そんなに俺は頼りないのか…。」

「はい!!」

「自信持って言うなよ。」

「あ、すいません。」

「仕方ないなぁ。」

 フィンレーは、剣を振り上げて、
 オピンニクスを召喚した。

「敵も出てないのになんで出す?」

 ご機嫌斜めのオピンニクスは、
 フィンレーを睨む。

「俺だけじゃ、戦闘力に欠けるので、
 このまま外にいてもらってもいいですか?」

 言い終わる前にオピンニクスは、
 宝石に吸い込まれていく。

「敵が出てからに呼べ。」

 常時出るのは意味がないと
 考えたオピンニクスは、
 もう呼んでも出てはこなかった。

「フィンレーってオピンニクスに
 嫌われてるのね。」

 ソフィアはかわいそうな目で見つめた。

「それ言っちゃう?」

「嫌われてるわけではないと
 思いますよ。」

優しくフォローするが、
なぐさめにはなっていなかった。
実際にここにはいないのだから。

「まぁ、いいけどさ。
 悠長に話してる場合ではないようだぞ。」

 フィンレーは鞘から剣を引き抜いて、
 戦闘態勢になった。

 目の前に現れたのは、スケルトンが3体も出て来た。
 ガイコツ男が、盾と剣を持ってこちらにじりじりと
 近づいてくる。
 黒い目からはガイコツのはずなのに、
 白く光りが見えた。

 アンデットモンスターが苦手なソフィアは
 後ろに逃げた。

 フィンレーとレクエペが前に進む。

「お任せください!」

 背中から矢を取り出し、弓で次々と
 矢を放つ。
 小人の弓矢。成人男性の矢と比べて
 攻撃力は半減する。
 3体に多少のダメージは与えたが、
 まだまだ動けるようだ。

「次は俺の番か!」

 フィンレーは、剣を振り上げては、
 左から右へ走りこみ、次々と
 切りかかっていく。
 カラカラと骨が崩れては、下にばらばらと
 落ちていく。
 剣や盾もそこらじゅうに散らばった。

「よし、やった。」

 倒したかに思われた。
 しばらくすると、魔法がかかったように
 崩れた骨が元に戻り始めた。
 
 ただ崩れただけで倒せてはいない。
 すぐ復活した。

「どうすれば?!」

「落ち着いて。
 たぶん、スケルトンたちの目が
 弱点よ。
 さっきから胴体しか狙ってないから。」

 遠くから叫ぶソフィアは、
 怖くて足がガタガタしていた。
 
「目? わかった。
 狙ってみる。」

フィンレーはもう一度、
3体のスケルトンたちに
立ち向かった。
剣のこすり合いから、
ぎりぎりと押し合い、
カキンと剣先が触れる音が響く。

フィンレーが立ち向かってる間に
レクエペが弓で矢をスケルトンたちの
目をそれぞれ狙った。

見事に的中して、次々と崩れては、
砂のように消えていく。

「よっしゃー。
 連携プレイだな!」

フィンレーとレクエペはグータッチで
喜んだ。

後ろの方で待機していた
ソフィアとケラットは、
安心して前の方に出て来た。

「よかった。
 無事に倒せて。
 復活するからびっくりしたよね。」

「ソフィアのおかげだ。
 ありがとうな。
 よくわかったな。
 目を狙うって。」

「だって、異常に目が光ってたから
 もしかしてって思ったの。
 役に立ててよかった。」

「魔法が無くても大丈夫だって言っただろ。
 アドバイスできるんだから、
 むしろいてもらわないとな。」

「うん。
 そうだよね。」

 ソフィアは自信がついたようだ。

 フィンレーとソフィアは、
 先に進む小人たちを追いかける。

「ほら、スカーレットさんを
 探さないと。」

「おう、そうだな。」

 剣を鞘にしまって、
 洞窟の奥の奥へと進んでいく。

しばらく進むと、途中から景色が変わった。
無機質な建物になり始めていた。

洞窟ではない素材。

魔法で異次元空間だったところから
急に現実に戻ってきた感覚だった。

ここの壁や柱をどこかで見たことが
ありそうな気がしたフィンレーとソフィア。

「ここってどうなってるのかな。
 あの先は洞窟で
 ここから先は建物。
 この壁の素材…どこかで。」

 壁をそっと触るソフィア。
 フィンレーも周りをジロジロと見る。

「お2人とも、ここがどこか
 ご存じなんですか?」

「うん。そうなんだよな。
 知ってるような…。」

 フィンレーが、壁にもう一度触れた
 瞬間、 
 周りがすべて白い光に包まれた。
 まぶしくて目をあけていられなかった。

 また違う世界に飛ばされたようだ。