金色に輝く池には、
月の光が照らされて
キラキラと反射していた。

周りの木々は、風に揺れて、
緑の葉を落としている。

フィンレーたちは
小人たちを捕まえては、
物珍しそうにジロジロと見ていた。

2人の小人は、
フィンレーとスカーレットに
捕まって手足を
バタバタさせていた。

「かわいいね。」

「ドールハウスに連れて
 いきたいわ。」

ソフィアは目を
キラキラさせていた。
スカーレットもまんざらではない。

「うわー、手を離せー。」

「やめてー。」

「なんだかかわいそうに
 なってきたわ。
 逃がしてあげましょう。」

 ソフィアは申し訳なさそうに、
 下におろすよう促す。

 フィンレーの手から離れたかと思うと、レクエペは、金の池の中に吸い込まれるように入って行った。
 同じようにスカーレットの手から
 ケラルトがジャンプして、同じように池の中に入って行く。

水のように波紋ができるかと思ったら、
シャボン玉のように一瞬パッと消えては
もとに戻っていた。

不思議な感覚だった。

「これって、池じゃないのか?」

「水のような感じしないね。
 次元が違うのかな。」

「金色で普通の池だったら、
 かなり高級だよ。
 違うんじゃない?」

 金を間近で何度も見たことある
 ソフィアは、本物の金ではないことに
 気が付く。

「行ってみるか?」

「今回のミッションは、
 このダンジョンだから
 行かないと達成できないよ。
 行こう。」

 スターレットは改めて、
 マップを開く。

 「そうだよな。
 ここ中に入ったら、しばらく
 回復とかできなそうだけど、
 大丈夫そうか?」

 「大丈夫よ。
 私の召喚獣がいるじゃない?」

「う、うん。
 あまり会いたくないけどな。
 ま、いいか。
 中に入ろう。
 さっきの小人たちも気になる。」

 フィンレーを先頭に3人は、金の池の
 中に入った。
 池の中に入るたびに
 シャボン玉が割れるような
 感覚になった。

 虹色が時々見える。

 空間がねじ曲がって、
 真っ暗闇になったり、
 真っ白になったり、
 自分の居場所が見つからなくなる。
 他の2人の姿がいつの間にか
 消えていた。

 空を飛ぶように、
 真っ白にまぶしく光る先へ
 手を伸ばす。

 

 夢から覚めたような感覚だった。


 フィンレーは、横になっていた。

 片足をゆっくりすこしずつ動かして、
 寝返りを打ち、体を起こした。

 メンフィリア帝国にそっくりな
 城下町が目の前にある。

 「ここはどこだ?」

 現実と夢かどうかさえ
 わからなくなってきた。
 
 おもむろに歩き出す。

 いつも買い物する商店街に
 親戚のおじさんおばさんがいる。
 
 本物なのか。

 よく見るとフィンレーの体は、
 商人の服で、さっきまで装備していた
 鎧や、兜、剣などは無くなって
 しまっている。

 フィンレーは無くなっていることに
 慌てた。

「え、嘘。買ったばかりの剣が無い。
 オピンニクスがいるはずの
 エメラルドが…。」

記憶は確かなのかさえ分からなくなってくる。錯覚する。

「あれー、フィンレー、何してるの?
 今から、店番でしょう。
 遅刻したらおじさんに怒られるよ?」

 スカーレットだった。
 フィンレーと同じように、
 商人の服装で古めかしい感じだった。 さっきまで着ていた鎧と兜、
もちろん剣なんて持っていない。

「え? 店番?」

「そうだよ。
 あんた、店番任されてるでしょう。
 この街一番の商人になるって
 小さい頃から言ってたじゃない?
 まだ半人前にも
 なれてないそうだけど…。」

「うっせーな。
 そういうお前こそ…。」

 突然右耳上あたりにピキンとした
 頭痛がした。
 何かがおかしい。
 商人になるなんて言った覚えがない
 フィンレー。
 2人で騎士を目指すと
 言っていたはずだ。


 一方、その頃のスカーレットは。

 目が覚めると、
 真っ暗な鍾乳洞の中にいた。
 ゆっくりと体を起こすと
 なぜか近くには
 ハンマーとツルハシが落ちていた。

「おーい、何してんだよ。
 これから翡翠の原石を掘り起こすんだろ。」

「え?」

 背中に剣を持っていない。 
 着ていた鎧はない。
 
 トレジャーハンターの恰好になっている。
 
 「フィンレー、何してるの?
  剣は?」

 話しかけてきたフィンレーの恰好も
 鎧ではない。
 動きやすい軽装になっている。
 
「剣?
 サバイバルナイフのこと?
 あんま、使わないけどな。
 今は、ツルハシだろ?」

「あ、そうなんだ。」

 スカーレットは状況がいまいち
 飲み込めなかったが、とりあえず、
 いうことを聞いておこうと
 フィンレーの後をついていく。

ソフィアはというと…。


ふわふわな絨毯のような雲の上にいた。
天空の世界にやってきていたようだ。

体を起こすと風が強く沸き起こる。

ローブがめくりあがった。

髪がわさっとほどけた。

「ソフィア、何してんだ。
 ほら、仕事しろって。」

 ペタンと座っていると、遠くから
 フィンレーが近寄ってくる。

 鎧を着ていない。
 剣も装備していない。 
 軽装だった。
 どこをどう見ても騎士ではない。

「あ、仕事って?
 騎士の?
 私はならないよ?」

「何寝ぼけたこと言ってるんだよ。
 これから、地上に雨を降らせるんだろ?」

「え?」

 フィンレーは、手に持っていた杖をふりかざして、
 魔法を唱える。

『ジュビア!!』

 北の方角に向かって唱えていた。
 みるみるうちに雨雲が現れてくる。

「ほら、ソフィア。
 そっち、東の空を唱えて。」

「え、ああ…これね。
 わかった。」

 ソフィアは、目の前に落ちていた
 杖を振りかざして、魔法を唱える。

 見よう見まねで唱えていた。

『ジュビア!!』
 
 フィンレーと同じく、雨雲が発生していた。

 言われたままに行動していたが、
 一体ここはどこなんだろうと
 あっちこっちを見渡していた。

 現実か夢かわからない。

 3人は、それぞれ違う場所に
 飛ばされてしまったようだった。