「お母さん、体育服をなんで洗ってくれなかったの?!今日必要だって言ったよね?」

「あら、夏樹。それはごめんね。洗うの忘れてたわ」

「忘れてたじゃないでしょ?!」

 はぁ、お母さんはいつもこうなんだから。

 本当に役立たずなお母さん。

 山中夏樹(やまなかなつき) 12歳はいつもお母さんにイライラさせられてばかりだ。

 お母さんは少し天然なところがあって、よくこうして私のお願いを聞いてくれない。

 お父さんは単身赴任で頼れるのはお母さんだけなのに…。

「夏樹、ごめんね。それは今日洗っておくから」

「今日?!今日洗っても体育時間には間に合わないじゃん。なんでお母さんなのにそんなにしっかりしてないの?お母さんとして失格だよ?」

 自分ではとても酷いことを言っているのは分かってる。

 でも、お母さんが何もやってくれないからこうなるんじゃん。

「もういい、学校に行ってくる」

 そう言って、玄関のドアを思い切り閉めた。