王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

「おい」

 そう言って、額に手を伸ばそうとした瞬間、エイミーはびくりと肩を震わせて、まるで怯えたように一歩下がった。

 ライオネルは驚愕して手を宙に伸ばしたまま動きを止める。

「……本当に、どうした」

 いつものエイミーなら、ライオネルが少し近づいただけで、嬉しそうに抱き着いてくるはずだ。

 そのエイミーが、ライオネルの手から逃げるように身を引くなんて――、そんなこと、過去を振り返っても一度たりともなかったはずだ。

 ライオネルはなんだかもやもやしたが、エイミー自身も、自分の行動に驚いているようだった。

 高い空のような綺麗な青い瞳を揺らして、ぎゅっと楽譜を胸に抱きしめると、ふるふると小刻みに首を振る。

「なんでもないです。……練習終わりなら、失礼しますね。ありがとうございました」

「おい!」

 ライオネルは反射的にエイミーの手を掴んだ。

 ばさばさとエイミーの手から楽譜が零れ落ちて床に散らかる。