確かにここのところエイミーの手作りクッキーに釣られて一緒に茶を飲んでいる。エイミーもライオネルが時間を割いてやっていることを理解して感謝しているのか、城に通ってきても強引に抱き着いてきたり匂いを嗅いだりしないので、ライオネルもそれほど邪険にはしていなかった。

(だが、断じて仲良くなったわけじゃない!)

 ライオネルはエイミーのことが好きじゃない。

 婚約を解消したい気持ちは今も昔も変わらないのだ。

(うっかりモモンガに近づきすぎたな。……いやだが、音楽祭の練習がはじまるまでにあの悲惨な歌を何とかしなくては)

 意味不明な歌詞なら音は外さないが、意味不明の歌詞のまま人前で歌わせるわけにも行かないのだ。ゆえにここからが正念場である。いかに正しい歌詞で音を外さずに歌わせられるかが最大の課題なのだ。

(しかし周囲に仲良くなったと思われるのはまずい。何よりエイミーが調子に乗るからな)

 エイミーにはきっちりと、ライオネルがエイミーを嫌いだということを理解させなくてはならないのだ。そうしてエイミーの方から婚約解消を持ち出させる。それがライオネルの計画だった。

 歌の練習で当初の計画がうやむやになっていたが今からでも遅くない。しっかりと「嫌いだ」と言うことを伝え続けるのだ。