王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

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 ライオネルは楽譜にせっせと文字を書きこんでいた。

 エイミーと歌の練習をはじめて四日。

 ライオネルはついにエイミーの音痴の原因を突き止めるに至ったのだ。

 最初はまったく意味がわからなかったライオネルだが、一昨日、フリージア学園の大学に在籍しているエイミーの二つ年上の兄パトリックに話を聞いておおよその見当がついたのである。

 フリージア学園は留年しない限り二年間で卒業だが、希望者はその上にある大学へ通うことができる。
 もちろん厳しい入学試験を経ての入学となるが、最近では大学を卒業していることが城で文官として働くための必須条件になっているため、城で働こうと考えている貴族はそのまま大学に進学することが多いのだ。

 抜け道もあるが、真面目なパトリックはそのまま素直に大学に進学した一人だった。

 たまたま学園の敷地内で出くわしたパトリックは、困った顔でこういった。

「うちの妹がご迷惑をおかけしているようで申し訳ありません」

 ライオネルははじめ、パトリックの言う「ご迷惑」は毎日毎日追いかけまわしてくるエイミーの行動を指していると思ったが、よく考えてみるとそんなことは今更だったので、わざわざ彼が謝るとは思えなかった。

 だから何のことだと問い返すと、歌の練習のことだと言われたのだ。