「ええっと、来月からだそうです」

「ならあと三週間はあるな。課題曲は決まったのか?」

「それなら一昨日決まりました」

「わかった。ならばお前は来月まで放課後は城に通え。週末もだ。歌の特訓をするぞ。そうしないと笑われるのは王家だからな!」

「え……?」

「なんだ」

「歌の特訓って、殿下が……?」

「当たり前だ! ほかの人間にお前の公害レベルの歌を聞かせられるか! あっという間に噂になる! 城なら防音室があるし、そこでなら音も漏れないからな!」

 エイミーはぱあっと顔を輝かせた。

「殿下、大好き!」

「俺は嫌いだ‼」

「でも大好き‼」

 エイミーは立ち上がると「来るな!」と言われても構わずにライオネルに抱き着いた。

 どうしてだろう、一昨日はあんなに胸が痛かったのに、今日の「嫌い」は痛くない。

「殿下、好き‼」

「ええいうるさい! 離れろ‼」

 ライオネルに顔をぐいぐいと押されながら、エイミーは「えへへー」と笑った。