「殿下、今週末はお城に遊びに行ってもいいですか」

「絶対だめだ来るな!」

「お菓子を焼いていきますね」

「人の話を聞け!」

「わたし、ゆっくり夜まで語り明かした――」

 まったく話の通じないエイミーに、ライオネルはとうとう我慢の限界に達した。

「だから嫌だと言っているだろう‼ 言っておくが、俺はまだお前に落とし穴に落とされたことを許したわけじゃあないんだからな――――――‼」

 熟れた果実のような色に染まった五月の空に、ライオネルの絶叫が吸い込まれていった。