「今日という今日は先生に報告するわよ! いくらエイミーの反射神経がよくても、これではいつか怪我をするわ!」

「そうねえ、園芸部の温室から盗まれたのなら窃盗だものね」

「だからそういうのはどうだっていいのよ‼」

 シンシアは「あー!」と叫んで地団太を踏んだ。

「エイミーはそこにいて! わたし、先生を呼んでくるわ……って、何をしているの?」

 くるりと踵を返そうとしたシンシアがぴたりと足を止めた。

 エイミーは教科書を芝生の上に置いてその場にしゃがみこみながら振り返る。

「何が?」

「だから、なんでしゃがみこんだの?」

「パンジーをどこかに避難させるのよ。だって可哀想でしょ?」

「そんなの後でいいじゃないの」

「だめよ。……だって、このパンジー、紫色なんですもの」

「紫色だからなんなの?」

「殿下の瞳の色だわ」

「…………もういいわ、パンジーは好きにしてもいいけど植木鉢の破片には触っちゃだめよ! 怪我をするもの!」