「殿下、そろそろ起きないとお昼ご飯食べそびれちゃいますよー?」

 お弁当を持ってくる生徒も多いが、ライオネルは学食派だ。

 フリージア学園のレストランを兼任しているカフェテラスには、生徒が貴族ということもあって一流のシェフが雇われている。

 お昼ご飯以外に、お菓子やケーキも提供されているが、食事は午後の一時間休憩の間しか出されない決まりだ。だからお昼休みを逃せばご飯にありつけないのである。

 エイミーはライオネルを無理やり起こそうかと考えたが、とても気持ちよさそうに眠っているのを見ていると忍びなくなってきた。

「……わたしのお弁当を置いておきますね。起きたら食べてください」

 ライオネルを誘って学食に行こうと考えていたエイミーは計画を変更して、持参してきたお弁当箱をベッドサイドの棚の上に置く。

 このお弁当は、カニング侯爵家の料理人が作ったものなので、きっとライオネルの口にも合うはずだ。

「今日は本当にごめんなさい、殿下。ゆっくり休んでくださいね」

 エイミーはライオネルのさらさらの髪をそっと撫でると立ち上がった。

「あの、あそこにお弁当を置いているので、殿下が起きたら食べてもらってください」

 医務室を出る前にウォルターに言づけると、彼は日誌を書く手を止めて顔を上げた。