(問題大ありだろう! 父上も大臣たちも馬鹿じゃないのか⁉)

 エイミーの家がカニング侯爵家というのも大きかっただろう。

 カニング侯爵家は由緒正しい家柄で、さらに何代にも渡って王家へ貢献してきた重鎮だ。

 エイミーの兄パトリックも、次期宰相とささやかれるほど聡明で、また仕事ができる立派な男である。

 そんな立派な家庭にあって、どうしてエイミーのような娘が生まれたのかは甚だ謎であるが、とにかくエイミーの欠点と言えばその「性格」を置いてほかはない。

 つまり、その性格の被害者がライオネルただ一人であるので、みな口をそろえて「問題ない」と言うのである。

 馬鹿にしている。

「って、手のひらの匂いを嗅ぐなっ!」

 ライオネルに張り付けないとわかると手のひらの匂いを嗅ぎはじめたエイミーに、ライオネルは悲鳴を上げた。

「殿下、今日もいい匂い」

「やめろ‼」

 どういうわけかこの変人は、昔からライオネルのことが大好きなのだ。

 どれだけ嫌いだ離れろと言っても、鋼を通り越してダイヤモンドのような硬度の精神で追いかけまわしてくる。