エイミーはライオネルが脱力したわずかな隙を見つけて、ぎゅうっと彼の腕に抱き着いた。

「離れろ!」

「離れません! 婚約者は運命共同体ですよ」

「お前と運命を共同したくないっ。自分の巣に帰れモモンガ‼」

「わたしは人間ですよ。モモンガみたいに愛らしいって殿下が思ってくださるのは嬉しいですが、モモンガと人間は結婚できません」

「ああくそっ」

 ライオネルは王太子にあるまじき悪態をついて、チッと大きく舌打ちした。

 口では文句を言いつつも、エイミーの腕を力づくで振りほどこうとしないあたりライオネルは優しいと思う。

 乱暴に見えて、ライオネルはいつも小柄なエイミーが怪我をしないように力を加減してくれているのだ。