パトリシアの供述によると、事前に調べていたとおり彼女の単独犯だったことが判明した。

 理由は、ライオネルの婚約者選びの問題だった。

 ライオネルは知らなかったが、エイミーを含む過去のライオネルの婚約者候補には順番が設けられていて、エイミーが選ばれなければ父親を大臣に持つパトリシアがライオネルの婚約者だった可能性が高かったという。

 そして、もしもエイミーとの婚約が解消になった場合、過去の候補から新たな婚約者が選出される線が濃厚で、その場合もやはりパトリシアが最有力候補に上がるだろうとのことだった。というのも、パトリシアを除く残りの元候補たちは、現在全員婚約者がいるからだ。

 つまりは、エイミーを蹴落として、ライオネルの婚約者になりたかった――それがパトリシアの動機で、それに嘘はないのだろう。ウォルターが調べたが、ピアノに仕掛けられていた針に塗布されていたのは、強力な痺れ薬だったが、命を脅かすほどのものではなかったそうだ。

 エイミーを執拗に狙っていたのも、脅せば怖がってライオネルとの婚約を解消するのではないかと思っていたからだと言う。

 エイミーとライオネルが入学してからの行動を観察していたパトリシアは、二人の関係は完全にエイミーの一方通行だと判断した。まあ、実際につい最近までそうであったのは間違いないのだが、それゆえ、エイミーさえどうにかすれば婚約は解消されると踏んでいたようだ。