王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

(ピアノの前の殿下、素敵……。でも、体調は大丈夫かしら? さっきウォルターさんに頭痛薬をもらってたし……)

 音楽祭がはじまる前、エイミーとライオネルは、医務室で今日の打ち合わせをしていた。

 その時にライオネルがウォルターに頭痛薬をもらって飲んでいた。朝から頭が痛いと言って、顔色も悪かったから心配だ。

 ライオネルのクラスの合唱曲は、エイミーのクラスのものと違って音域が広く、伴奏も難しい。ピアノの伴奏も、高音から低音まで幅広い鍵盤を使うのだ。

(殿下、大丈夫かしら。……何もないといいけど)

 舞台袖から見える一階席の最前列には、数人の護衛とともに国王夫妻が座っていた。

 国王夫妻だけではない。今日は学生の家族の見学が許可されている日なので、家族のために設けられた一階席の前半分は見学者ですべて埋まっていた。これだけ見学者が集まったのは、純粋に我が子の様子を見に来たのもあるだろうが、おそらく国王夫妻が見学に来ると言うのが大きいだろう。

 国王夫妻は面白がるような顔で舞台を見つめている。

(殿下が人前で伴奏するなんて、学生生活が終わったら二度とないでしょうからね)

 王太子を伴奏に使って許されるのは学生のときだけだ。王太子に向かって「伴奏してください」なんて、不敬すぎて誰も言わない。というか言えない。