王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

「ねえ、今日お兄様はいるかしら?」

「はい、お嬢様のあとに帰っていらっしゃいましたよ」

「ありがとう」

 エイミーはスージーに断って、資料を片手に、兄パトリックの部屋へ向かった。

 扉を叩けば、すぐに返事がある。

「お兄様、入りますねー」

 扉を開ければ、パトリックは一人がけのソファに座って本を読んでいた。

 エイミーの顔を見て、ちょっと複雑な表情を浮かべる。

「お前、今度は何をやらかしたんだ?」

「どうしたんですか藪から棒に。わたし、なにかやらかしたことなんてないですよ」

「お前の常識はどうなっているんだろう……」

 パトリックはやれやれと息をついて、本にしおりを挟んで閉じるとテーブルの上に置く。

「学園じゃあ、お前が殿下を追いかけまわしていると噂になっているぞ。その相談に来たんじゃないのか?」

「違いますけど? その噂、何か対策が必要なんですか?」

「必要じゃないと思っているお前がすごいな。ここ数日おとなしくしていたようだから、噂を消すために頑張っているのかと思っていたが違ったのか……」

「殿下はもう好きな時にぎゅーさせてくれるので、追いかける必要がなくなっただけです」

「妄想か?」

「違います!」

 この兄は、兄のくせにたまにひどい。