王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

「そんなに欲しけりゃ職人に頼んで似たようなものを作ってもらえばいいでしょ。いいから行くわよ、授業に遅れちゃうわ!」

「え、でもここをこのままにしておけないし……」

「ほっとけば先生たちが片付けてくれるわよ! わたしたちが散らかしたんじゃないんだから放置よ! 破片で手を切ったら危ないし! って言っている側からなにしてんの⁉」

 割れた陶器人形の顔の部分の破片を拾っていたエイミーに、シンシアがぎょっとした。

「え? シンシアが職人に頼めば作ってくれるって言ったんじゃない。だからこれを持って帰って、知り合いの陶器職人に作ってもらうのよ」

「…………それ、本気でほしかったわけ?」

「もちろんよ! 可愛いでしょ。ほら、この変な顔!」

「わたしにはちっとも可愛いとは思えないけど……。もうわかったから、拾うならさっさと拾って、早く行くわよ!」

「うん!」

 エイミーは拾った破片をハンカチに丁寧にくるむと、それを持ってシンシアとともに教室へ急いだ。鐘の音とともに教室に滑り込めば、そのあとからすぐに音楽の教師がやってくる。

「音楽祭には、陛下も聞きにいらっしゃることになっています。真剣に取り組んでくださいね」

 国王が聞きに来ると聞いてざわつく教室の中で、エイミーは拾った陶器人の破片を見つめて、別のことを考えていた。

(どうせなら二個作ってもらって、一つを殿下にプレゼントしようっと。ふふ、お揃いって、恋人同士っぽくていいものね!)

 ライオネルが心の底から嫌がりそうなことを考えて、エイミーはにまにまと笑った。