王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

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「ねえシンシア、これなんだと思う? 遥か東の国の遺跡から出土するって言う土偶にそっくりな気がするんだけど、どこで売っているのかしらね」

「……あんた、本当に他に言うことはないわけ?」

 頭上から降ってきて割れた妙な陶器の人形の破片をつまみ上げて言えば、シンシアが額に手を当てて空を仰いだ。

 移動教室のために中庭を歩いていたとき、例のごとく空から降ってきたのが、今日はこの可愛いのか可愛くないのかわからない妙な形の陶器人形だったのである。

「あんた、これがぶつかってたら危なかったのよ? わかってる?」

「うん。でも当たらなかったし」

 ものが降ってくるのは中庭か玄関。それがわかっているので、集中していればエイミーの反射能力ならば防御結界を張ったりよけたりすることが可能なのだ。だからそれほど危険はない。ライオネルのくれたブレスレットもあるし。

「ねえねえ、それよりこれ、どこで売ってるのかな? なんかこう……何かを訴えかけているようなこのちょっと不細工な顔が逆に可愛いって言うか、わたしこれがほしい」

「こんなもんどこに飾る気よ」

「もちろんわたしの部屋よ」

 ものが降ってきた事実よりも、この人形の入手方法を考えて頭を悩ませるエイミーに、シンシアは首を横に振った。