「それから、学園の警備員の中に城の魔法騎士を数名潜り込ませておく」

「気づかれませんか?」

「その辺はうまくやるから大丈夫だ。もともと俺が在籍中は俺の従者が学園で仕事をすることになっている。今のところウォルターだけを入れていたが、大人数でなければ増えても疑問は持たれないだろう。……それはそうともう十秒はとうに過ぎたぞ。いい加減匂いを嗅ぐのをやめろ」

「まだくっついていたいです」

「くっつくにしてもこの体勢だと疲れるだろうが」

(ん?)

 エイミーはライオネルにぴたっとくっついたまま首をひねった。その言い方だと、くっつくこと自体は問題ないように聞こえる。

 あのライオネルが、くっつくのはダメじゃないと思っているということだろうか。

 びっくりして顔を上げると、ライオネルがちょっと赤い顔をして、それから突然、エイミーをひょいと抱え上げると、自分の膝の上に横抱きにした。

「――! ――! ――‼」

 エイミーは目を白黒させた。声にならない歓喜の叫びが、頭の中でリーンゴーンという鐘の音とともに響いている。

 叫んで部屋の中を走り回りたい衝動に駆られたが、ライオネルにお膝抱っこされているという奇跡の瞬間を手放すのは非常に惜しい。

 ぷるぷると震えていると、ライオネルが怪訝そうな顔をした。

「どうした?」

「感動と歓喜と興奮と、それから叫んで踊り狂いたい衝動に打ち震えています……!」

「……お前のモモンガ語は健在なんだな、意味がわからん。嫌なら下すが……」

「嫌じゃないです死んでもおりません一生このままでいいです‼」

「一生は俺が困る‼」