「ここ数日逃げ回っていた理由を聞かせてもらおうか」

 ライオネルが凄みのある笑みで迫ってくる。

 ひえっとエイミーは心の中で悲鳴を上げた。

 エイミーは昼休みの時間のみならず、放課後も同じようにしてライオネルから逃げ回っていたのだが、どうやらそのことでライオネルの逆鱗に触れてしまったようだ。

 頭一つ分高いライオネルの端正な顔が、息もかかるほどの至近距離にある。

 ちょっと怖いのに、でもそれだけではない理由で心臓が自分でもびっくりするくらい早くなった。

 逃げ場を探して右に左にと視線を動かすけれど、顔の両方の横にライオネルの長い腕があって、とても出ないが逃げ出せそうもない。

「で、で、殿下、お昼ご飯食べに行かなくていいんですか……? わたしのことは構わず、お昼を食べに行ってください……」

 自力で逃げ出せそうもないので、エイミーが声を裏返しながらそう言えば、ライオネルはにやりと笑って腕に引っ掛けていた袋を見せた。

「今日は料理人に言って弁当を作らせた」

(お弁当は冷めているから嫌いなくせに!)