王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

「……エイミー」

「殿下」

 カラカラに乾いていく喉から絞り出すように彼女の名前を呼べば、エイミーの声と見事にかぶった。

 互いに譲るように黙ればまた沈黙が落ちて、ライオネルは小さく「なんだ」とエイミーに続きを促した。

 ライオネルは別に、何か伝えたい言葉があったわけではないからだ。ただ沈黙に耐え切れなくなってエイミーの名前を呼んだだけなのだから。

 エイミーはクッションをぎゅうっと抱きしめて、足先で少しだけブランコをこいだ。

 キィ、キィ、と規則的でどこか音楽めいたブランコの小さな音がする。

「……殿下、お話があるんです」

「ああ。なんだ?」

 ブランコの小さな音に耳を傾けながら、ライオネルは静かに問い返した。

 夜のしじまに、エイミーとこんな風に静かに言葉を交わしたことはない。

 静かだからなのか、夜だからなのか、薄暗いからなのか――その全部なのかもしれないけれど、胸の中に妙な感傷が沸き起こって、それがライオネルを落ち着かなくさせた。