王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

「あー……楽しいパーティーでよかったな」

 エイミーが何も言わないので、沈黙に耐えかねてライオネルが言うと、エイミーは大きな目をぱちぱちとさせて、それからこくりと頷いた。

「はい、楽しかったです」

 エイミーのそのあたりさわりのない返答に、ライオネルは少なからずショックを受けた。

 ここのところ妙におとなしかったエイミーだが、誕生日パーティーの日にはいつもの彼女に戻るのではないかと心の中で思っていたからかもしれない。

 二人きりになればきっと、いつものわけのわからないモモンガ語でライオネルを翻弄し、抱き着いて、毎年のように「誕生日だからキスしてください!」とこれまたわけのわからない自論を展開しはじめるのではないかと。

 毎年、「誕生日プレゼントは別でくれてやっただろう!」とエイミーのキスのおねだりを退けるのが恒例になっていたから、きっと今年も同じだろうと、ライオネルは思っていた。――思いたかっただけかもしれないが。

 先ほどまで楽しそうに笑っていたのに、今のエイミーの顔には笑みはない。

 何故だろう。何故――エイミーは笑わない?

 エイミーはクッションを意味もなくいじりながら、何かを思案するように視線を落としている。

 今日のエイミーの格好が、いつもよりも大人びているからだろうか。目の前の彼女が急に知らない誰かになったような気がした。

 ひっそりとした夜の空気に流れるこの沈黙が、なんだか嫌だ。

 何か言わなくてはいけない気がする。言わなければ、取り返しのつかないことが起こりそうな、そんな嫌な予感を覚えるのだ。