王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

 エイミーは母親の手を放しててってってっとライオネルに駆け寄ると、覚えたてのカーテシーで挨拶をした。

「はじめまして、ライオネル殿下。エイミー・カニングです」

 何十回と練習した挨拶に、まず感動したのは王妃の方だった。

「まあ、素晴らしいカーテシーだったわエイミー。賢い子だとは聞いていたけど、本当に賢いのねえ! しかもとっても可愛らしいわ!」

 次に、王妃のあとから馬車を降りてきた国王も、にこにこと笑うエイミーに心をぶち抜かれた。

「モモンガみたいに目が大きくて可愛らしい子だな」

 エイミーは子供のころから顔立ちだけは群を抜いて愛らしい子で、たいていの大人はエイミーの笑顔にいちころだったのだが、それはどうやら最高権力者である国王夫妻にも当てはまったようだ。

 頭の回転の速い子供だったエイミーは、それをそのまま「笑えば大人は機嫌がよくなる」という方程式に当てはめて、あちこちに愛想を振りまいて回っていたので、社交界ではカニング侯爵家の娘は天使だと噂されていた。その噂はもちろん国王夫妻の耳にも届いていて、おかげでエイミーは、この時すでにライオネルの五人の婚約者候補の中で群を抜いて国王夫妻に気に入られていたのである。

 それが後々のライオネルの悲劇を招く結果にもつながるのだが、もちろんこの時のライオネルが気づいているはずもない。

 愛らしい婚約者候補に出迎えられてまんざらでもなかったライオネルは、笑顔でエイミーに手を差し出した。