王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

「風邪が一瞬で治る魔術があればいいのに……くしゅっ」

「そんなものがあったら医者はいりませんよ」

 何を馬鹿なことを言っているんですかとスージーはあきれ顔を浮かべた。

 その通りだが、止血の魔術があるのだから、風邪を撃退する魔術があったっていいではないかとエイミーは思う。

「お食事をお持ちしますから、おとなしくしていてくださいね」

 スージーがベッドから出るなよと念を押して部屋を出ていくと、エイミーは天井に向かって息を吐き出した。

 ずきずきとした胸の痛みは落ち着いたが、風邪のせいなのか何なのか、気分はちっとも盛り上がらない。

(わたしが休んだところで、殿下はちっとも気にならないんでしょうね……)

 ライオネルはエイミーのことをよく「モモンガ」と言う。

 いっそ、本物のモモンガになれたら、ペットとしてなら可愛がってもらえるだろうか。

 そんなことできるはずもないのにと、エイミーは自嘲して、それから「くっしゅっ」と大きなくしゃみを一つした。