王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

「エイミー様は、モモンガではなく人間です」

 ライオネルは怪訝がった。奇しくも先ほど、エイミーも同じことを言っていたからだ。

「何を言っているんだ? そんなこと当たり前――」

「本当に、わかっていらっしゃいますか?」

「どういう意味だ」

 ケビンは小さく息を吐くと、聞き分けのない子供にするように、ゆっくりと続けた。

「モモンガは人の言葉を理解しませんが、人間は人の言葉を理解します。そして言葉は、人を喜ばせることもあれば傷つけることもあるのです」

「そんなこと――」

「もちろん殿下はご存じでしょう。しかしもう一度、そのことをよくよく考えてご覧なさい」

 ケビンはそれだけ言うと、ティーセットをまとめてワゴンに乗せ、防音室から出て行った。

 ライオネルはわけがわからずに、眉を寄せたままケビンが出て行った扉を見つめる。


 ――わけがわからないのに、どうしてかその言葉が妙に心に引っかかった。