ハプニングは恋のはじまり



「俺、中学までは野球やってたんだけど、肩壊して野球できなくなってめちゃくちゃ荒れまくってたんだ。バカみたいに毎日喧嘩ばっかして、周りからもあいつはもうダメだって諦められてた。
だから八重が俺を気遣って怒ってくれたことがびっくりしたし、嬉しかったんだ。
あの時はありがとう」


 八重の目を真っ直ぐ見て、はっきりとそう言った。


「それをずっと伝えたかった」

「こちらこそ、ありがとうございます」


 八重は明緋を見返し、柔らかく微笑む。


「短い時間でしたけど、とても楽しかったです。明緋さんがいてくださって、本当によかったですわ」

「八重……」

「さっきは言いそびれてしまいましたけど、このメッシュはもう一人の幼馴染とおそろいなんです。彼女のグレーの瞳に合わせたんですよ」

「そうだったのか」

「ええ、お気に入りですの」

「よく似合ってるよ」


 明緋は優しく八重のグレーの髪に触れた。そして、二人の視線が絡み合う。
 その瞬間、まるで時が止まったみたいだった。トクントクン、と小刻みに鼓動音が聞こえる。

 八重のものか、明緋のものか、或いは二人のものか。鼓動は夜風に紛れてとけ合ってゆく。


「八重……」

「!」