そんな二人を時に宥め、時に面白おかしく見守るのが八重のポジションだった。
 この程度の小競り合いは止めるに値しないため、他の班員を確認して先生に報告する。


「三班、全員揃いましたわ」
「おー。三班の班長は吉野じゃなかったか?」
「あっ忘れてた!!」
「流石は八重姫。ダメ班長のカバーがさりげなくスマートですね」
「悪かったなダメ班長で!!」
「吉野、うるさいぞー」


 空港に到着した時点からこんなに騒がしく、これから始まる3泊4日の沖縄修学旅行はどうなってしまうのか。
 それでも八重は胸を弾ませていた。これでも前日はなかなか眠れなかった程、楽しみにしていた。

 喧嘩ばかりしていても、幼馴染の二人と同じ班で回れるというのも嬉しかった。


「ねぇねぇ、あの怖そうな人たち何……?SPみたいな」
「八重さんのボディガードじゃない?」
「ああ……」


 ただ一点を除いては。

 高校生の修学旅行には相応しくない、黒服にサングラスをかけた屈強な男性たちが数人混じっている。
 彼らは八重の父が雇った八重のボディガードだ。

 旧華族の末裔である満咲家は代々警察官の一族であり、八重の父は現警視総監だ。
 それ故にその身を狙われることがあり、実際八重が幼い頃何度か誘拐されかけたことがある。