空港に到着すると、まず目に入るのは「めんそーれ、沖縄」という大きな文字。正しく沖縄に着いたと実感させてくれるものだ。


「着いた!!なんかもうあったかい!てか暑いね!?」


 そう言って興奮気味に手で煽いでいるのは、吉野(よしの)鏡花(きょうか)
 そんな親友を面白く眺めつつ、満咲(みつさき)八重(やえ)はあくまで落ち着いて言った。


「鏡花、点呼を取るのですからはしゃいでる場合ではありませんわ」

「あっそうだ、私班長だった」


 鏡花はよく通る声で「三班全員いるー!?」と叫ぶ。はしゃぐな、というのは大声を出すな、という意味も含まれていたのだが無意味だったようだ。


「うちの班長がやたらバカデカい声のおかげで探す手間が省けますね」


 皮肉たっぷりの笑みを浮かべながら現れたこの少年は、染井(そめい)那桜(なお)
 高校生らしからぬ大人っぽさと端正な容姿、抜群のスタイルで同級生のみならず、空港ですれ違う人たちの視線も奪っている。

 誰もが見惚れる彼に一切動じるどころか、むしろ鏡花は噛みついた。


「那桜……!なんであんたと同じ班にならなきゃいけないの!?」
「今更ですか?」
「納得いかない!!」


 鏡花と那桜、そして八重は幼馴染である。
 幼少期から鏡花と那桜は犬猿の仲、つまりライバルであり、高校2年になった今でもこのように喧嘩しているのが日常茶飯事だ。