溶けたラムネ入りの炭酸ジュースは、美味しくない。


レジまで持って行こうとすると、「ここまででいいですよ、あっちのフリースペースで待っててください」

そういって、指さすのは、エスカレーター上がってすぐ左にあった、フリースペース。

さっきまでいた大学の交流スペースみたいなものだ。

さっきまでいた大学の交流スペースとは違って、目の前にカフェがある訳では無いけど、四角い机の横に椅子が2個対面するように置かれている。

待っててください…か。


そりゃ待ってろって言われたら待ちますけど。

しばらくレジが終わるまでフリースペースで待っていると胡桃は何かを持ちながら僕に差し出してきた。


「待たせちゃいました、先輩、これ」


そういって差し出すものは、アヒルの絵本。

え?子供だと思われてんのか?
なんて思ったのは内緒の話。

「私が好きな本なんです。ひよこの子どもとして育てられるアヒルの本です、読んで欲しくて」


「見たことあるな昔」

「ほんとですか?じゃあ、もう一度、読んで欲しいです。大人になってから読むとだいぶ印象が変わりますよ」

「立派な白鳥になる話だよな」

「そうですよ、私も白鳥みたいになりたくて、なんか私と似てる気がするんです。持つべき交友関係は、同じ仲間の人同士なら傷つけ合わなくて済むと思うんです

だって同じ仲間だから、同じことしてる仲間だから」

「確かに、同じ仲間なら、相手の知らないことに怯えなくていいもんな」

「はい。自分の存在を知らないところで知らない人達と一緒に実在していても、そりゃ仲間はずれって、普通じゃないって嫌われますよね」

「人間も仲間作る習性あるからな、引くぐらいに」

「そうですよね。今の私なら分かるんですけど、高校時代のその小説書くこと知ってるのは、親友だけにしとけば良かったんです。

嫌われるなんて思ってなくて、こんなに素敵な小説を書く権利が誰にでも与えられてるって言うのに、もっと書きたいって思ったのに、書けなかった、書きずらかった、周りを気にしすぎて、書けなくなった、だからお母さんだけに見せてたんです」