ただいま、私の王子様。



キーンコーン。

チャイムとほぼ同時に、私たちは食堂へと急いだ。

「美織、早く!!」

「ちょ、っと、待ってよ…!そんな早くに混んだりしないから!」

「だって席空いてなかったり売り切れてたりしたら悲しいんだもん!急ぐよ!」

「ええ~?も、無理だよ…」

4限目は体育。運動したばかりだというのに、香苗は全速力で階段を駆け上がっていく。
私はそれに、何とかついていった。

角を曲がったら、食堂。

「はぁっ…やっと…!」

気が緩んだからか、足がもつれて、転んでしまった。
転んだ拍子に持っていた財布を投げてしまって、それが誰かにぶつかった。

「わあ、ごめんなさっ―!?」

立ち上がって相手を見ると、見慣れたあの顔があった。

「大丈夫だった?…え、美織ちゃんっ…!」

彼は目を真ん丸にさせて、心底驚いていた。

喉の奥が、ひゅっとなる。
心臓が痛いのは、走ったせいか、それとも。

「あ、ご、ごめんなさいっ…!!」

財布の存在なんて忘れたまま、私は一目散に食堂へ走った。

名前を呼んでいた気がしたけれど、そんなの聞こえない。
もう私は関わっちゃいけないから。
関わっていいような人じゃない。

ごめんなさい、さよなら―