「なあ斗真、あれお前のカノジョじゃん?」

「ん?」

友達の視線をたどると、確かに、彼女がいた。

「あ、ほんとだ」

彼女なのかは、よくわからないけど。

あ、目が合った、と思った時には、もう彼女は走り去っていった。

「あ、走って行っちゃった。お前、何、嫌われてんの?」

「嫌われてなんか…ないと思うけどなあ」

「嘘だろ、お前まだそんなこと言えんの?」

「ぜってー嫌われてんだろ、あれは」

「んー…」

俺のどこが嫌だったのか。
まだそれは知らない。聞いていない。

彼女がいたところをもう一度見ると、何があったか把握できていなさそうな一人の女子生徒がいた。

「あ、(みやび)の妹ちゃん」

「あ!桜木先輩…あー、そういうこと…」

「ちょ、お前ら先行っといて」

「んだよー!ナンパか?」

「ちげーよ、さっさと行け」

「へいへい。グッドラックー」

連れの二人の姿が見えなくなるまで待って、俺は話を切り出した。

「あのさ、美織ちゃんのことなんだけど…」

「あぁ…はい」

「美織ちゃん、俺のこと嫌いって言ってた?」

「え…、っと…」

なんて言ったらいいかわからない、という顔をして、彼女は考えていた。

「もし聞いたり言ったりしてないんなら、聞いといてほしいんだけど」

俺がそう付け足すと、彼女は少し考えた後に、きっぱりと答えた。

「無理です」

「え!?」

「あたしは仲介者じゃないです。あくまで美織の恋のキュービット役です。美織のためならなんだってするけど、そういうことは直接、自分の口から本人に聞いたほうがいいと思いますよ。じゃ、もういいですか?美織を教室で待たせてるんで」

「おう…」

年下にド正論で締められて、しばらくその場から動けなかった。

「自分の口から、ねぇ…」

俺は、どう動けば正解なのか。
なんせ、俺は高校三年生。
タイムリミットが、もう近づいている―