学校へ着く。
全校中のみんなが、私のことを白い目で見てそうで、顔を上げられなかった。
教室の前につくと、足ががたがた震えだして、止まらなかった。
帰りたい。しんどい。
そう思ったとき、ぎゅっと手に感覚があった。
「大丈夫だから。行こう?」
香苗が私の手を握っていた。
一歩踏み出して、教室の中へ入る。
どきんどきんと心臓が痛くて、みんなの目が怖くて、うつむいて顔を隠す。
つっ、と冷や汗が背中を流れた。
私たちの存在に気付いた誰かが、ねえ、と合図する。
と、ざわざわとしていた教室が一気に静まり返った。
「え?よく来れるよね、逆にソンケイするわー」
一人の一軍男子が言った。
するとそのまわりの一軍たちが、ぎゃはは、と下品な笑い声をあげて、悪口大会を開いた。
「それな、ウチだったら絶対無理なんだけどー!あ、そもそも蛙化なんてしないわ」
「それはそう。蛙化はまじでないわ」
「ちょ、なお!しーっ!!みんな思ってるから、それ!」
また、爆笑の渦が教室に起きた。
幸い香苗は前の席なので、安心して過ごせる。
うつむきながら席へ移動すると、同じ班の子たちが話しかけに来た。
「美織ちゃん、気にしなくて大丈夫だよ。」
「俺らは別に、そんなのマジで気にしてないからね?」
「俺らは味方だから。応援してるよ」
「…、ありがとうっ…」
香苗がこちらを向いて、にこりと笑った。
「ね?言ったでしょ、大丈夫だって」
みんながついてくれてる。
また、涙が出てきそうで、急いで制服の袖で目元をぬぐった。
すごく心強かった。
安心した。
怖くない。大丈夫。
そう、思えた。
でも、そう思ったのは束の間だった。
