マンションの入り口に行きオートロックを外す。
「すげえ……初めて見た、オートロック!俺のボロいアパートとは大違いだな」
エレベーターで8階のボタンを押す。
部屋の鍵を開けて「どうぞ」と言う。
「お邪魔します」
スゲーと佐野くんはキョロキョロしていた。
「座ってて」
ソファにゆっくりと腰をおろした。
「温めるから少し待ってね」
冷凍ごはんとカレーとスープを温めるさくら
「出来たよ、こっちに来て」
カウンターになっていたダイニングの椅子に座る。
「ここはホテル?」
「何でよ、違うよ(笑)」
「一人暮らし?」
「うん」
「家賃すごいだろうね」
「ここは祖父のマンションなのよ、だから私は払ってないの」
「黒河さんて金持ちなんだね」
「まあ、私のお金じゃないけど、親とか祖父母には感謝はしてるかな」
「でもカフェのバイトしてるのは何で?お金に困ってないだろ」
「うん、だから週末だけね、自分の欲しいものは働いて買いたくて」
「偉いな、あっ、じゃあいただきます」
遥海くんはポケットから髪ゴムを出して前髪を軽く結んだ。
「髪の毛伸びたよね」
「切る金もったいなくて、食費に回してる」
「そうなんだ」
「でも、次にバイト代入ったら切るかな」
さくらも遥海くんとカレーを一緒に食べた。
美味い、美味いと言ってくれた。
「ご馳走様、マジで美味かった」
「そう、良かった(笑)」
「あっ、皿洗う」
「別にいいのに」
「いや、こんな美味い飯久しぶりだし、いつもコンビニの塩むすびかパンだから」
「いつも?飽きるんじゃないの?」
「もう飽きてる(笑)」
遥海くんは携帯で時間を見た。
「あっ、もしよかったら今日の一限のノート見せてくれないかな、寝ちまってて」
「いいよ」



