「手洗い、うがいして、はい」
コップを渡した。
うがいをしているとゴホッゴホッと咳こんだ。
「喉痛いんでしょ」
背中をさすっていると手首をつかまれた。
遥海くんの顔が近づいてくる。
長い前髪からは細めた目が少し見えた。
「いいよ、キスして風邪うつす?佐野くんが元気になるなら喜んで」
遥海くんはピタっと止まった。
ほら、やっぱり優しい。
しんどくてイライラしてるけど早く熱を下げなきゃ
買ってきたソーダ味のアイスを渡した。
「冷たくて気持ちいいから食べて(笑)」
袋を開けて持っているとシャリっとかじってきて、さくらからアイスを受け取った。
「座って」
カウンターの椅子に遥海くんは座りアイスを食べる。
食べ終わると肘をついてボーッとしていた。
あったかい卵を溶いたうどんをテーブルに置いた。
「はい、多分何も食べてないんでしょ?」
風邪薬と水も置いた。
体温計も出してきて脇に挟むと8度あった。
ほら、熱あるじゃんと体温計をしまう。
「明日、部活とバイトに出たかったら、今日ゆっくり休んで、あっ授業もね!」
「ぷっ、授業がついでかよ」
ズルズルとうどんをすすりながらやっと笑ってくれた。
さくらは部屋から体を拭くシートとTシャツを持ってきた。
「これ、着替えて、汗かいたでしょ」
「サンキュ」
「佐野くんでもサイズ合うと思うよ、私も大きいから(笑)」
「この前さ、遥海くんて呼ばれたけど?」
さくらはピタッと動くのをやめた。
「え?嘘でしょ」
さくらは真っ赤になった。
「言ってないよね?ちゃんと佐野くんて……」



