まじないの召喚師3




会計を済ませ、スサノオノミコトが、己のマントを風呂敷のように使い、商品を全て包み込み、背負う。

伸縮自在な外套に感動しながら、彼と並んで店を出て帰路につく。

人の姿が見えなくなったところで、私の腕の中にいるツクヨミノミコトが不気味な曲調の鼻歌を歌いだした。



「ふーん、ふんふーふーふんふー」



呪われそうだ。

そして、記憶のどこかにひっかかる音の並びだ。

なんだっただろう。



「ふーんふふふーふふふふふふふーん」



「こーっこはどーこのほそみちじゃー」



ツクヨミノミコトの鼻歌と、私の口ずさんだ音が一致する。


これだ。


歌ってみてすっきりすると同時に、寒気を思い出して、自身を抱き締める腕の力を強くする。

上着を忘れただけのせいではない寒気に震えた。



「うげっ……」



私に抱きしめられたツクヨミノミコトが歌をやめた。


あなたは呪いの人形ですか。

呪いの人形でしたね。

不利益ばかりもってきやがって。

疫病神め。

働け元凶。



「なんだい?」



「なんにも」



「月海が失礼なことを考えたのはわかったよ」



「そうですか」



ツクヨミノミコトは懲りもせずに続きを唄う。


別にね、やめてとは言わなかったんだけどさ。

気持ちよく歌いたいよね、わかるよ。

曲によっては大歓迎だっかもね。


雪景色のせいか見慣れない細道を抜け、我が家がすぐそこに見えた時。

ツクヨミノミコトの鼻歌がぷつりと止まる。



「止まれ!」



スサノオノミコトが、前に出て盾になる。

瞬間、雷の落ちたような轟音とともに強い風の音が真横を通り過ぎる。

一瞬で風がおさまったので、スサノオノミコト越しに前を見る。



「私の家ー!!」



ひと月前までは口癖だったそれ。

見慣れなくなってしばらく経つ光景に、反射で叫んだ。


累計何度目の我が家の破壊か。

原因は、稽古場の同盟者しかいない。

誰がやった。

どんな派手な大技をぶち込んだらこうなるのか。

いつもと違うことといえば、響のドーピング薬のせいに違いない。


ほか、考えられるなら敵襲だけど。

そうだとしたなら、直前勉強で襲ってこないんじゃあなかったのか先輩の嘘つき!



「大丈夫だよ。あのオオクニヌシの建てた家なんだから。そのように作られているのは月海だってわかっているだろう」



「そこじゃない……」



ツクヨミノミコトは言うが、響の偽装結界も破られているようで、骨組みに現在進行形で肉付けされている様子が丸見えなのだ。


問題はそれだけじゃない。

隣の家の瓦や外壁塗装も吹っ飛んでいる。


ただ、思ったより周辺への影響が少ないのは、響の結界の効果か。


家の事は残念だけど、よくやった。

他所様に迷惑をかけるよりマシ。

不幸中の幸いとるべきかどうか………。



周囲の家が、騒がしくなる。

大きな音を聞いて、様子を見に行くのか、避難の準備でも始めたのか。



「急ごう!」



大きくなる足音に追い立てられるように、私は走った。