財布を掴んで、靴に足を突っ込み、玄関を飛び出す。
走りながら靴を履き、足が靴におさまったら全力疾走。
上着を忘れたが、先輩の凶悪な顔を思い出せば、震えはするものの寒さなど気にならない。
「何をするんだい月海。これでは私があやかしの子どもごときに尻尾巻いて逃げたようじゃないか」
「…………………」
腕の中のツクヨミノミコトがなんか言っているが、無視だ無視。
やったことに対する責任を取りましょう、だ。
食べてしまったものは戻らないのだから、代わりを作るしかないでしょう。
近くのスーパーに駆け込み、あるだけのホットケーキミックスをカゴに入れる。
「ふん………っ…………!」
重たい。
「仕方ないなぁ」
「んっ!」
カゴが軽くなって、楽々持ち上がる。
ツクヨミノミコトの力だ。
小指いっぽんで運べるわ。
「手伝う代わりに、チョコ買ってよ。次はチョコトッピングするから」
誰のせいで、と言いそうになるのを堪える。
ここでツクヨミノミコトの機嫌を損ねたところで何にもならない。
あえて言うなら、脱臼する。
右手のカゴにホットケーキミックス、左手のカゴにチョコやマシュマロを山のように入れ、レジに向かっていると。
ポケットに入っていたスマホが、ピコンとメッセージの着信を知らせた。
両手がカゴで塞がっている私の代わりに、スサノオノミコトが確認した。
「………桜陰からだ。卵と牛乳も買ってこい、と」
「もう持てない」
カゴはいっぱいだし、重たいし、私の手は3本もないのだ。
「私の甘味は譲らないよ」
何も言ってないのに、ツクヨミノミコトが主張した。
返品してやろうか。
「我が持とう」
瞬きの瞬間には、軍服の青年が私の両手のカゴを掠め取った。
「ありがとう」
「礼はいい。早く桜陰に届けよう」
「そうですね」
私はカゴを取りに行き、卵と牛乳で埋め尽くす。
お店の人やお客さんには悪いけど、ひとつだけ残して、店頭に並んでいるだけ全部買わせてもらう。
たくさん食べるのだから、いくらあっても困らないだろう。
以前なら食費が怖いところだが、今、お金を出しているのは同盟者たち。
持ってきているのも、同盟者から徴収したお金。
つまり私の財布は傷まない。


