まじないの召喚師3







「お出かけお出かけふふふーん」



ツクヨミノミコトが私の肩に座ってご機嫌に歌う。



「ふんふんふふーん」



あまり重さを感じないそれは、私の歩調に合わせて左右に揺れる。



「きゃっきゃっ」



時折足をパタパタさせているのに、落ちる気配もない。

バランス感覚のいい奴め。

いや、ツクヨミノミコトは飛べるから、私の肩の上で浮いている説が濃厚か。

器用だな。

これ以上、変な動きをしないでくださいね。


人前で飛び回るとか絶対やめろ、と横目を送って祈りつつ、人通りの多い道を歩く。

ふと、背中の方から声がした。



「ママー、あのおにんぎょうさん、かわいかった」



「そうねー」



「おにんぎょうさんはかわいいけど、あのおばさんはブサイクだね」



「こら。大きな声で言っちゃダメでしょ!」



「ぷっ!」



「くすくすっ」



「いや、逆に大きな声で言ってあげたら?」



「自分では似合ってないこと、気づいてないんだよ」



「服がカワイソー」



聞こえてるんですよ。


窘めるふりして笑うママさんも、便乗するギャルぽい人達も、聞こえるように言ってるでしょ。

蔑みの目を感じるんだからね。


似合ってないことくらい知ってるよ、服に顔が釣り合ってないって。

だってこれ、美少女少年柚珠のロリータ服だもの。

ツクヨミノミコトが、今着ているものとそっくりの柄があったのだ。

これを着ろと見せられ時は、顔が引き攣ったね。

これなら初めに着ていたお気に入りセットのままがよかったと思っても、あの場の私に、拒否権などなかったのだ。

正月早々悲しいぜ。



「月海、あいつら、不幸にするね」



ツクヨミノミコトは笑顔のまま、闇を見せる。



「やめなさい」



だからといって、正直に言った彼女達が不幸になれとは思っていない。

いや、そんな聖人君子じゃないから、悪口のぶん、小指を箪笥の角にぶつけろくらいしか思わない。

これも不幸?

なら祈ろうかしら。

少なくとも、祈る相手は、原因であるツクヨミノミコトではないが。

スサノオノミコトが大きめのフリルたっぷりショルダーバッグから顔だけを出す。



「………言われる原因は、月海の服を選んだツクヨミだ」



「そ。私とお揃いだよ。嬉しかろう」



「………責任を取れ」



「うんうん、だから、文句つける奴らを不幸にするのさ」




「やめろって言ってんでしょ。鬼か悪魔かなにか?」



一般人が願うならまだしも、ツクヨミさんのそれは必ず起こるから違う。

双子コーデってやつがしたいのなら、ツクヨミさん用に、ジャージでも買い与えたらよいかしら。

そしたら私は分相応になれるわ。



「月海、今可愛くないこと考えたよねー?」



「……………」



「叶えないよ」



「何も言ってませんが」



「決ーめたっ、今日はとことん私に付き合ってもらうからねっ。月海は私が右と言ったら右に行くんだよ」



「はいはい、お嬢様。初めからそのつもりですよ」



むかっとくるのを、大人の対応でぐっとこらえる。

スサノオノミコトはどう思ったのか、鞄の底に姿を隠していた。

それからは、ツクヨミノミコトの命じるままに、到着したショッピングセンターを練り歩いた。