でもまあとりあえず。
「あけましておめでとう、今年もよろしくお願いします」
「……………」
言うと、ツクヨミノミコトがきょとんとした。
いかに、新年になったからといって、話題を逸らそうといているのがバレバレ。
とはいえ、新年になったのだから、挨拶は必要でしょう。
後悔はない。
が、一度口を出た音は戻せない。
私は本格的に話を逸らそうと、早口で言葉を続ける。
「去年のお詫びに、餅くらいなら焼けるから、一緒に食べよう。あずきときなこと砂糖醤油、どれがいい?」
お腹がいっぱいになったら、変なことは全部忘れるから。
どうかここは流されて欲しいな。
私は笑顔を作って、ツクヨミノミコトの答えを待つ。
ツクヨミノミコトの丸く見開かれた目が、だんだんと細まり、笑みの形を作った。
「やきもち? 月海からのやきもちー? あはははっ」
「…………」
「照れ隠しかなー? へー。実は私にやきもち焼いてたんだねぇー」
やっぱうぜえなぁ、と顔が引き攣りそうになるのを抑えた。
そんな使い古したようなギャグ、今さらしませんよ。
正月だから、たいていどこのご家庭にも餅くらいあるでしょ。
てか、誰が誰に対してのやきもちか。
さっきまでのしおらしさは演技だったのか。
謝って損した気分だ。
「仕方ないなあ。月海のいちばん最初のあけましておめでとうをもらったから、許してあげる」
ツクヨミノミコトが鼻歌混じりにキッチンへ飛んでいく。
思った以上に効果があってなによりだ。
「月海のやきもちだーっ、あはははは」
震える拳を強く握りしめて、銀髪人形を見送った私の左肩にスサノオノミコトが乗り、耳打ちした。
「………冗談めかしているが、あれは本気で寂しがっていた」
「え?」
「………あまり疑ってやるな。あれは単純だ」
それだけ言い残し、スサノオノミコトはキッチンまで跳躍した。
なにがどうなって、こうなったのだろう。
スサノオノミコトには、私たちのやりとりがどう映っていたのか。
ツクヨミノミコトばかりを構って、スサノオノミコトは放置している状態だったが、それに対する苦言もなし。
リビングにひとり残された私は、餅の付け合わせを選んだツクヨミノミコトに呼ばれるまで、そこを動けなかった。


