まじないの召喚師3



でもまあとりあえず。



「あけましておめでとう、今年もよろしくお願いします」



「……………」



言うと、ツクヨミノミコトがきょとんとした。

いかに、新年になったからといって、話題を逸らそうといているのがバレバレ。

とはいえ、新年になったのだから、挨拶は必要でしょう。

後悔はない。


が、一度口を出た音は戻せない。

私は本格的に話を逸らそうと、早口で言葉を続ける。



「去年のお詫びに、餅くらいなら焼けるから、一緒に食べよう。あずきときなこと砂糖醤油、どれがいい?」



お腹がいっぱいになったら、変なことは全部忘れるから。

どうかここは流されて欲しいな。

私は笑顔を作って、ツクヨミノミコトの答えを待つ。

ツクヨミノミコトの丸く見開かれた目が、だんだんと細まり、笑みの形を作った。



「やきもち? 月海からのやきもちー? あはははっ」



「…………」



「照れ隠しかなー? へー。実は私にやきもち焼いてたんだねぇー」



やっぱうぜえなぁ、と顔が引き攣りそうになるのを抑えた。


そんな使い古したようなギャグ、今さらしませんよ。

正月だから、たいていどこのご家庭にも餅くらいあるでしょ。

てか、誰が誰に対してのやきもちか。

さっきまでのしおらしさは演技だったのか。


謝って損した気分だ。



「仕方ないなあ。月海のいちばん最初のあけましておめでとうをもらったから、許してあげる」



ツクヨミノミコトが鼻歌混じりにキッチンへ飛んでいく。

思った以上に効果があってなによりだ。



「月海のやきもちだーっ、あはははは」



震える拳を強く握りしめて、銀髪人形を見送った私の左肩にスサノオノミコトが乗り、耳打ちした。



「………冗談めかしているが、あれは本気で寂しがっていた」



「え?」



「………あまり疑ってやるな。あれは単純だ」



それだけ言い残し、スサノオノミコトはキッチンまで跳躍した。


なにがどうなって、こうなったのだろう。

スサノオノミコトには、私たちのやりとりがどう映っていたのか。

ツクヨミノミコトばかりを構って、スサノオノミコトは放置している状態だったが、それに対する苦言もなし。


リビングにひとり残された私は、餅の付け合わせを選んだツクヨミノミコトに呼ばれるまで、そこを動けなかった。