「これ、マシロのめとおなじいろだ」
「これはヨモギとおなじいろ」
呑気にキャッキャとはしゃぐ子供達を背に、どうしようと悩んでいると。
「たのもー!」
玄関からインターホンと声が聞こえた。
「はーい!」
私はすぐさま返事して、玄関に走る。
救世主きた!
誰だか知らないけどありがとう。
あの嫌な空気を変えてくれるならなんでもいい。
私が来客対応から帰るころに、第三者の介入で気まずくなった、ふたりが冷静になってお茶を啜ってくれているのが理想。
スキップを踏みそうなくらい浮かれていたが、玄関先の人物を見て、膝から崩れそうになった。
「失礼。火宮桜陰がここに居ると聞いて参ったのだ」
成人男性にも劣らない筋骨隆々な少年、浄土寺常磐が人好きのする笑みを浮かべる。
「あれれぇー、先客がいるみたいだねっ」
咲耶に負けず劣らずな美少女顔の男の娘、桃木野柚珠が二つに結われた艶やかな黒髪を揺らした。
「この気配は、神水流響かぁ。手間が省けたよ」
プリン頭の少年、金光院雷地の身につける派手な金のアクセサリーが輝く。
この三人は、火宮、神水流と並ぶ五家の次期当主達だ。
彼らは家人である私の許可を待たず上がり込む。
壁を支えに立つ私の横を抜け、迷う事なくリビングへの扉を開いた。
「……武器を持たぬ者に刃を向けるのは許容しかねる」
「なになに? 早速面白そうな事やってんねぇ」
刀を引っ込めていなかったのだろう先輩に、いい感情を持たない常磐と、面白がる雷地。
「あやかしの子ども達いるじゃん。カワイイー。まぁ、ボクには劣るけどぉ」
褒めているようで自慢する柚珠。
「……チッ」
先輩は、闖入者どもに気を削がれたらしい。
「あれ? 刀さげちゃうの? つまんない」
「………脅すつもりだったんだよね。狐の子を僕にくださいって挨拶だと思った?」
「そなの?」
「……うぜぇ」
「………僕はただ、あの人の子どもを見守りたいだけ。取らないから安心してよ」
「なんも言ってねぇだろ」
「……でも、あの子が悲しむなら、僕はどんな手を使ってでも奪うから」
「安心しろ。そんな日は来ねえ」
「なになに? 浮気? 不倫? 略奪愛? ……ちょまって、刀をこっち向けないで」
「そういうテメェも剣を纏わせてるが?」
「備えは必要でしょ」
「武器など卑怯。男なら拳で語ろうではないか!」
「キャッ! ちょっとぉ! ボクに当たるところだったんだけど!?」
「すまんな、小さくて見えんかった」
「あはっ、こーんな美少女が見えないなんてさぁ………。そんな目、要らないよね」
一触即発な空気が伝わってくる。