まじないの召喚師3




「響、止めろ」



「………やだよ、めんどくさい」



常磐が響に助けを求めても、一蹴された。

しかしおじさんは、バカスコボコボコにされ、顔の形が歪み、呼吸も浅く視線が定まらなくなってきた頃。



「……………はぁ」



響は彼らに向かって歩き出す。



「………退いて」



踏み続ける柚珠は引かない。

男の娘でありながらも決して非力ではない柚珠の蹴りによって、折れた歯が転がっている。


いや違う、あれは入れ歯だ。

歯茎ごと吹き飛ぶなんて、なんてスプラッタ。



「邪魔しないで」



「…………はぁ」



退く気のない柚珠の足の下。

おじさんの口めがけて、響は懐から出した試験管の中身をこぼす。

おじさんの腫れ上がった顔は、少しの光を帯びた後、元に戻った。



「響ちゃん……?」



「た……助かっ………」



「………どうぞ」



邪魔に入った響を睨みつける柚珠。

邪魔に入った響を救いの目で見るおじさん。

そんなおじさんを柚珠に即売りつける響。



「おまっ!? 助けに来たんじゃないのかブゴッ!」



再び柚珠による蹴りが始まった。



「………死んだら困るから」



響は回復薬入り試験管を複数本、両手に構えて見せた。



「………僕も怒ってるんだ。大丈夫。何度でも治す」



青褪めるおじさんの脳天に、柚珠のかかと落としが決まった。



「ゴフッ!」



「………はい」



「ブルバアッ!」



「………はい」



「ゴボブグッ!」



「………はい」



柚珠と響の共同作業。

遠慮をなくした柚珠の重い一撃と、全てを癒す響の回復薬。

餅つきのようにテンポよく、大怪我と回復を繰り返す。

拷問とはいえない、リズムゲームを思わせるそれに楽しくなりつつあった頃。



「まて、待ってくれ! 響ちゃん! この凶暴女装男を止めろ! 可愛い君の言う事なら聞くだろう!」



「…………は?」



苦し紛れのおじさんの一言で、響の周りの空気が一瞬で氷点下になる。

逆に、柚珠の機嫌が随分よくなった。



「キミ、話がわかるねっ」



振り上げた足が、ゆっくりと床につく。

おじさんの目が希望を見出したように輝いた。



「でねっ、そんな響とボクのデートを邪魔したんだ。ボクの言いたい事、わかるよね?」



しかし柚珠は一瞬で悪い顔になる。



「……っ、桃木野柚珠! 彼女にこんな姿見せていいのか!」



「彼女? 誰のことかなぁ? 響ちゃんはぁ彼女じゃないもんねっ」



「隠しているのだろうが、見ればわかる! 桃木野の従者とは仮の姿で、実は恋人だろう!」



「………違う」



「否定せずともよい! こちら側につけ! 我々は全て受け入れよう!」



だから我を助けろと、おじさんの目が言っていた。



「アンタが受け入れなくて結構。響ちゃんはボクの従者でも恋人でもなくて、神水流だもんっ!」



怒れる柚珠の蹴り上げたおじさんの頭が回転し、数メートル先まで転がる。