気を取り直して。
自室に戻った私はベッドに潜って目を瞑る。
少しずつ意識が遠のいていって………、あ、イカネさんが手招きしてらっしゃる。
彼女の立つ花畑に足を踏み入れようとした瞬間、再びの振動。
「根暗ァッ!」
「………うるさい女装趣味」
「女装じゃないしー。可愛いものが好きなだけだしぃー」
「………同じじゃん」
「もう怒ったんだから! 眠れる森の美女にしてあげる!」
「…………それは君だろう? さながら僕は魔法使い」
「そうだね、根暗に美女は似合わないわ」
「………大人しく永遠の眠りにつけ」
「食らいなさい! 毒リンゴの雨!」
「……この程度」
「うそっ、毒リンゴが溶けて……!」
「……あらゆるものを溶かす水。弱毒風情が、水の術師たる僕には届かない」
「リンゴがこっちに流れてっ、キャアァァァ!」
………この家には、防音仕様はついていないようだ。
そらそうか。
襲撃にいち早く気づく為には不利になる。
しかしここまで騒がれるとご近所迷惑………いや、響の張った偽装結界の効果で漏れ出てないのか。
にしても、随分と物騒なやり取りが隣でなされているが。
…………壁ぶち破ってこないよね?
「………」
掛け布団を頭まで引き上げ、まるくなる。
原因はわかっている。
よって、無視だよ無視。
もう一度、あの場所に行かせてくれ我が夢よ!
「うるせぇ! 地下でやれ!」
雷地による、本日二度目の雷が落ちた。