「じゃあ、さっきの揺れはなんだよ!」
「知りません! ………いっ!」
瞬間、再び家が揺れる。
バランスを崩して壁に手をついた。
足の小指ぶつけて痛い。
「響の部屋か!」
黒っぽい煙の漏れ出る響の部屋の扉を、先輩が蹴破り、煙が溢れ出てくる。
「っ、げほごほがはっ……っ!」
なんとも言えない濃厚な煙をもろに吸っていまい、呼吸が苦しくなる。
肺に残った空気を全て吐き出し、意識して吸わない。
涙が滲んできたところで、急に体が軽くなった。
「身体強化を忘れているよ」
ツクヨミノミコトが代わってくれたらしい。
体に悪そうな煙を吸っても平気な身体強化最強か。
「今日からは、自室以外では身体強化を切らさない方がいいだろうね」
まったくもって、そのとおり。
オオクニヌシにより強化された家を破壊するなんて、とんでもないですね。
いや、強化された家を揺らす爆発も相当ですが。
もしもこれが一般家庭なら、ガス爆発のように、ご近所さん巻き込んで半径数キロを吹き飛ばしそうだ。
一般人は木端の如く死んでしまうよ。
術師怖い………。
「現実逃避はそこまでにして、現実を見に行こうか」
ツクヨミノミコトは扉のなくなった響の部屋を覗く。
もちろん、視界を共有している私にも認識できるわけで。
廊下にその大半を流してもまだ煙たい室内は、見覚えのある太い荊が蠢いていた。
先んじて入室していた先輩が輪切りにしたそこから生えて、キリがない。
切り落とされた部分は足元でうにょうにょと蠢く。
芋虫みたいで気持ち悪いぞ。
だが、気持ち悪い挙動のくせして凶悪。
普通の芋虫にはない薔薇のような棘が床を叩くたびに傷をつける。
これは芋虫ではなく毛虫だね。
芋虫にいがぐりやウニを足して2で割ったような。
大好きな先輩のいる危険地帯な響の部屋に、入らずいてくれるツクヨミノミコトは実は優しいと錯覚しそうだ。
それとも先輩に対する信頼か。
刀を振り回す先輩の背中から苛立ちが伝わる。
斬るたびに数が増えて流石に鬱陶しかったのか、裸足で蹴飛ばしたが、その足から血が飛ぶことはない。
しかしパジャマは裂かれ、肌色がしだいにあらわになる。
先輩の体に切り傷はついておらず、血もにじんでいない。
パジャマがボロボロになりつつあることから、切れ味は証明されている。
なるほど、身体強化とはこう言うことか。
体育館で初めて会った時より、固くなったものだ。
「おい! 響、無事か!?」
先輩が荊の向こう側に声をかける。
響とは、協力して戦った仲である。
同盟者として、助けに行くのは当たり前だ。


