まじないの召喚師3




本日二杯目のお茶は、少しお高めのものを出した。

そして私は、ローテーブルを囲む次期当主達と同じ卓につく。


関係者と知られた以上、これからは私も当事者になるわけだ。

いつまでも先輩の後ろに隠れていられないでしょ。

召喚された式神達は、それぞれ主人の後方に控えている。


隣の先輩が注目を集めるように咳払いをした。



「では、気を取り直して。同盟を結んだ我ら、対等な話し合いといこうか」



余裕たっぷり爽やか笑顔の先輩からは、こいつに逆らったらどうなるか分かってるよな、という台詞が伝わってくる。

虎の威を借る狐状態だが、ここは、得意そうな先輩に任せる。

ツクヨミノミコトは喜んで先輩に手を貸すだろう。

一般人な私は、悟られぬよう、どんと構えるのみ。


虚勢も武器。



「桜陰と響を誘いに来た理由はね。まず、場所がないこと。学校にも手を回されててね。学校の訓練場所も使えないんだ。一般生徒も巻き込めないし。神水流の家を使うつもりだったんだけど、分家に乗っ取られたって聞いてどうしようかと思ったよ」



たははと笑う雷地。

緊張感がない。



「俺とこいつが住むこの家なら、それが出来ると?」



「もちろん」



「見ての通り、住宅街ど真ん中の一般家庭だが?」



「この家の地下に作ろうと思って。常磐とも話したんだ。ね?」



「ああ。イワナガヒメと、タケミカヅチで地下に空間を作る。そこに、稽古場と同じ、自動修復の結界を張れば、十分使用に耐えると思うが、どうか?」



常磐の提案に、先輩は少し考えてから私に振ってくる。



「……どう思う?」



「…………」



できるならやればいいんでない?


と思うが、そのまま口に出すわけにはいかない。

虚勢の鎧を脱ぐにはまだ早い。

判断に迷った私に代わり、イカネさんが代わりに答える。



「お二方では岩肌の殺風景なものとなりましょう。オオクニヌシの手も借りるのがよろしいかと」



「決まりだね」



「ついでに家も改築しましょう」



イカネさんは提案に乗り気のようだ。

家の増改築が決定された。



「次の理由は、試験内容だけど、団体戦の項目があるんだ」



私と先輩は、手近に置いていた書類を確認する。


【妖魔退治及び神事、呪物取り扱い等に関する認定試験】受験申込用紙。


受験者の名前を書く下に、班員を記入する欄があった。

上限6人。

任意とあるが、書かない場合、一人での参加になると隅に小さく書かれている。

ここに居るのも6人で、ぴったりだ。


常磐が、ふむと頷く。



「例年、参加人数によって内容も違ってくるものだが……」



「クソジジイどもが、試験にかこつけて暗殺を企んでいるんだ。過去問もあてにならないだろうね」



柚珠は、美少女らしからぬ凶悪な顔になっていた。



「つまり、ここにいる6人で組んで、まとめてクソジジイどもの思惑を潰してやろうよってこと」



脳内でクソジジイどもをギタギタにのしているのだろうか。

いい笑顔だったり無表情の圧だったりと、皆さん顔が怖い。



「………一人より、複数の方が生存率が高い。戦闘の苦手な柚珠は、盾が欲しい」



「響だって、戦えないのはボクと同じでしょ。それにボクはサポートには自信があるよ」



「……僕は君より役に立つ」



「分家に乗っ取られた根暗のくせに文句あんの?」



「……家を追い出されたのは一緒」



「キミと違って、ボクは自主的に出てきたの」



「……一緒」



「ムカつく。表でなよ」



「………やるの?」



「やるな。双方、矛を収めよ」



霊力を練り上げる小柄な二人を、常磐が拳骨一発で沈めた。



「結局は、次世代を担う俺達が今のうちに親交を深めておけば、当主となった後も安泰という、打算だ!」



そして彼は堂々と、快活に笑った。

私もつられてくすりと笑う。


打算とか言っちゃうところに好感を持てる。

これも打算であるなら恐ろしい。


先輩も毒気を抜かれたようで、卓上に右拳を突き出す。



「いいね。その打算、乗った!」



私、響、常磐、柚珠、そして雷地の拳が先輩のそれに当てられ、小気味いい音が鳴った。

次期当主による同盟、ここに締結。