本日二杯目のお茶は、少しお高めのものを出した。
そして私は、ローテーブルを囲む次期当主達と同じ卓につく。
関係者と知られた以上、これからは私も当事者になるわけだ。
いつまでも先輩の後ろに隠れていられないでしょ。
召喚された式神達は、それぞれ主人の後方に控えている。
隣の先輩が注目を集めるように咳払いをした。
「では、気を取り直して。同盟を結んだ我ら、対等な話し合いといこうか」
余裕たっぷり爽やか笑顔の先輩からは、こいつに逆らったらどうなるか分かってるよな、という台詞が伝わってくる。
虎の威を借る狐状態だが、ここは、得意そうな先輩に任せる。
ツクヨミノミコトは喜んで先輩に手を貸すだろう。
一般人な私は、悟られぬよう、どんと構えるのみ。
虚勢も武器。
「桜陰と響を誘いに来た理由はね。まず、場所がないこと。学校にも手を回されててね。学校の訓練場所も使えないんだ。一般生徒も巻き込めないし。神水流の家を使うつもりだったんだけど、分家に乗っ取られたって聞いてどうしようかと思ったよ」
たははと笑う雷地。
緊張感がない。
「俺とこいつが住むこの家なら、それが出来ると?」
「もちろん」
「見ての通り、住宅街ど真ん中の一般家庭だが?」
「この家の地下に作ろうと思って。常磐とも話したんだ。ね?」
「ああ。イワナガヒメと、タケミカヅチで地下に空間を作る。そこに、稽古場と同じ、自動修復の結界を張れば、十分使用に耐えると思うが、どうか?」
常磐の提案に、先輩は少し考えてから私に振ってくる。
「……どう思う?」
「…………」
できるならやればいいんでない?
と思うが、そのまま口に出すわけにはいかない。
虚勢の鎧を脱ぐにはまだ早い。
判断に迷った私に代わり、イカネさんが代わりに答える。
「お二方では岩肌の殺風景なものとなりましょう。オオクニヌシの手も借りるのがよろしいかと」
「決まりだね」
「ついでに家も改築しましょう」
イカネさんは提案に乗り気のようだ。
家の増改築が決定された。
「次の理由は、試験内容だけど、団体戦の項目があるんだ」
私と先輩は、手近に置いていた書類を確認する。
【妖魔退治及び神事、呪物取り扱い等に関する認定試験】受験申込用紙。
受験者の名前を書く下に、班員を記入する欄があった。
上限6人。
任意とあるが、書かない場合、一人での参加になると隅に小さく書かれている。
ここに居るのも6人で、ぴったりだ。
常磐が、ふむと頷く。
「例年、参加人数によって内容も違ってくるものだが……」
「クソジジイどもが、試験にかこつけて暗殺を企んでいるんだ。過去問もあてにならないだろうね」
柚珠は、美少女らしからぬ凶悪な顔になっていた。
「つまり、ここにいる6人で組んで、まとめてクソジジイどもの思惑を潰してやろうよってこと」
脳内でクソジジイどもをギタギタにのしているのだろうか。
いい笑顔だったり無表情の圧だったりと、皆さん顔が怖い。
「………一人より、複数の方が生存率が高い。戦闘の苦手な柚珠は、盾が欲しい」
「響だって、戦えないのはボクと同じでしょ。それにボクはサポートには自信があるよ」
「……僕は君より役に立つ」
「分家に乗っ取られた根暗のくせに文句あんの?」
「……家を追い出されたのは一緒」
「キミと違って、ボクは自主的に出てきたの」
「……一緒」
「ムカつく。表でなよ」
「………やるの?」
「やるな。双方、矛を収めよ」
霊力を練り上げる小柄な二人を、常磐が拳骨一発で沈めた。
「結局は、次世代を担う俺達が今のうちに親交を深めておけば、当主となった後も安泰という、打算だ!」
そして彼は堂々と、快活に笑った。
私もつられてくすりと笑う。
打算とか言っちゃうところに好感を持てる。
これも打算であるなら恐ろしい。
先輩も毒気を抜かれたようで、卓上に右拳を突き出す。
「いいね。その打算、乗った!」
私、響、常磐、柚珠、そして雷地の拳が先輩のそれに当てられ、小気味いい音が鳴った。
次期当主による同盟、ここに締結。


