まじないの召喚師3







身体を返された私は真っ先に土下座する。



「この度は、うちのツクヨミノミコトが大変失礼を……」



「……あー、いいって、いいって。こっちも言葉が足りなかった。交渉の材料を手に入れたって思われても仕方ない。………実際、使うつもりだったし」



雷地の、最後の呟きまでばっちり聞こえていた。



『ほらね。知ってはいけないことを知ってしまった愚か者を消してやろうとしただけだもん』



だとしても、すぐ消そうとするのはやめてくださいよ。

代理謝罪も、結構くるものがあるのだ。

まあ今回は、家屋破壊がないだけましだけど。


両脇に手を入れられ、体を起こされた。

振り向けば、先輩と目が合う。



「謝る必要はない。武力も立派な交渉の手段。逆に謝りすぎると舐められる」



「………どちらが優位かわからせるのは大事。先制したツクヨミノミコトは間違ってない」



隣では、ヘッドホンを装着し、本家ローレライの歌声の準備は出来ている。

あんな目にあったのに、響は本当にツクヨミノミコトの味方らしい。


なるほどここは郷に入っては郷に従え。

実力者にしか従わないという理屈もわからなくない。

対等であるために、力を示せ。

先制攻撃の実力行使は、私の嫌うところだと知っているはず。

しかし今回はそれが一番の平和的解決方法だった。



『たまたまじゃない?』



ツクヨミノミコトから、拗ねたような声が返ってきた。


図星か。

素直じゃないなぁ。


やり方が私の趣味じゃないだけで、ツクヨミノミコトは私の事を大切に思ってくれている。

それが分かって、嬉しい。


悪役のふりをして、私に気付かれず最善の選択をしてくれたのだろうけれど。

今後は手段も良くなるともっと嬉しい。


ツクヨミさん。



『なんだい?』



いつも、私の都合に振り回してごめんなさい。



『いいよ。きみの優しさは知っている』



その優しさは、愚かさと言い換えられるのだろう。

でも、そのあり方を変えると私が私でなくなってしまう気がするのだ。

ツクヨミさんの言葉を、直接そのまま受け入れづらいところはある。

でも、知らない世界に踏み込む以上、それまでの常識が非常識となり得ることも、今回の事で分かったつもりだ。

つまり、何が言いたいかと言うと。


これからも、間違った事をするかもしれないけど、ずっと味方でいてください。


都合のいいお願いだとは分かってる。

私と離れられない以上、足元を見て言っていると。

それでもツクヨミノミコトは、フッと微笑んで優しい声色で言うのだ。



『まずは、オモイカネ至上主義を改めてもらおうか』



却下。

そこだけは、どうあっても譲れない。